atusi について

三重県四日市市で小さな木工所を営んでいます。

スケルトン・アンプ その2 正絹磨きのシャーシ

スケルトン・アンプでは、回路とかその定数は、既存の古いアンプから出力管と電源周りだけ変更して、そのまま流用するつもりでした。20年以上も前に作ったそのアンプを、懐かしさもあって測定しなおしたりして弄んでいるうちにハマってしまいました。

バラック組みのアンプを測定。左がオシロ、右が歪率計

バラック組みのアンプを測定。左がオシロ、右が歪率計

整流回路をGZ37で、バラックで組む

整流回路をGZ37で、バラックで組む

トランス類は、そのまま使うつもりで、新たに整流管を使った整流回路をバラックで組みます。随分以前に、回路実験というかデータをとるためにお菓子のブリキの箱を使いました。こんなものでもとっておくものです。球を変更するので出力管周りとNFB関係の定数だけ相応に変更するつもりでした。しかし、 オシロスコープの波形を眺めているうちに、我慢し切れなくなって 結局前段の回路から全面変更することにしました。このあたりのことは、また採ったデータとともに別に記事にしたいと思います。

スケルトンアンプの鉄板シャーシ

スケルトンアンプの鉄板シャーシ

古いボール盤を持ちだしてのシャーシの穴あけも終了。その鉄板の表面処理をどうするか、赤錆仕上げと悩んだのですが、今回は日本の古い鉄製金具で使われれている正絹磨きとしました。古いワラビ取手の再処理でやったことはあったのですが、これくらいの表面積のものに施すのは初めてです。色々問題はありそうですが、まあ今回は半分道楽ですからこんな所としておきます。マットな風情でなかなかに良い感じです。

シャーシの表面処理は日本古来の正絹磨きで

シャーシの表面処理は日本古来の正絹磨きで

第66回 正倉院展2 漆四合香箱残欠(うるしよんごうこうばこざんけつ)

公開講座に関しては後で触れます。正倉院展は、まだ会期が残っています(〜12日)。これから行かれる人もいらっしゃるかもしれませんので、今回の展示で個人的に印象に残ったものをいくつか紹介します。

右ページ、漆四合香箱残欠

右ページ、漆四合香箱残欠

同じ物を4口組み合わせた、何かの盛器ではないかと解説されています。ヒノキ製で、全面に布被(ぬのきせ)の上、黒漆を塗る。とされています。

そのいわゆるエッジの効いたという表現がぴったりのシャープで軽妙洒脱な形状はすばらしい。写真ではわかりにくいのですが、ごく小さなものです。図録によると、最大辺23.6、高さ6.0センチとなっています。各辺の厚みは、直線部、稜線型部分ともに5厘(1.5ミリ)ほどでした。これが4口そろえば、また違った印象になるとおもいますが、これ単独でも見飽きることはありません。

こうしたものの制作技法を詮索するのは邪道かつさもしい事かもしれません。それでも、やはり気になります。この稜線部もヒノキ製とするとどうやって作ったのでしょう。今風に、ごく薄い板を重ねてプレスして接着したとしても、こうしたくっきりとしてエッジの立った形状にするのは難しいでしょう。削り出しとすれば、目切れの部分が何箇所も出来てこの薄さで完成させる事自体が困難な上に、実用にはならないと思います。考えられるのは、4個のパーツに分けて削り出し、それを接着させる事ですが、当然、今のようなメーカーや木工家御用達の恐ろしげな接着剤などありませんから、漆かニカワでしょう。それを補強する意味もあって布着せを施したとも考えられますが、それでこの薄さできちんと角を出して仕上げるというのはなんとも素晴らしい熟達の技能です。そうした感嘆すべき技能・技法を駆使して、それをさりげなく実用的な器として形にしている。本当に、粋で素晴らしいなと思います。

第66回 正倉院展1 菊一文字と吉田蚊帳に寄りました

昨日11月3日、第66回正倉院展に行ってきました。例年、自営業の気安さで平日に訪れているのですが、今年はちゃんとしたお勤めの人に同行を願ったために祝日の観覧となりました。でも、そのおかげで公開講座を聴くことが出来て、これがたいへん良いものでした。今まで、こうした講座は、土日の開催ということで、端からスルーしてきたのが悔やまれます。

菊一文字の彫刻刀と吉田蚊帳の蚊帳の生地

菊一文字の彫刻刀と吉田蚊帳の蚊帳の生地

これもここ何年かの恒例のように、まずは奈良町商店街の菊一文字に。今年もご夫妻とも健在でお店に出ておられる。ケースの中には、東大吉銘の丸刃の彫刻刀が2本だけある。もう残っているのは、これだけだと奥さんがおっしゃる。ケースから出してもらって確かめると2分(6ミリ)と4分(12ミリ)とちょうど持っていないサイズだったし、これも何かの縁とか例によってこじつけて買う。去年は、鯵包丁を買った。その前は、おろし金とか、彫刻刀とか、切り出しとか・・・正倉院展に合わせて最近は毎年寄らせてもらっている。今年もお二人ともお元気そうで嬉しいですと挨拶。四日市と名古屋から来たと言うと、名古屋からは毎年来てくれる人が他にもいて、ことしは裁ちばさみの研ぎを依頼され置いていったとの事。もうかなり高齢とお見受けするご主人が今でも研ぐのだそうだ。

そこから、通りがかった奈良町物語館で若い作家さん10人ほどのクラフト展を覗いて、吉田蚊帳で、蚊帳の素材となる生成りの麻布を買いました。漆の下地用(布着せ)です。

前に、名古屋の小谷漆店で漆の下地の布着せについて教えてもらいました。一般的には寒冷紗(麻)と言われているが、今、輪島ではこれを使っているといって見せてもらった木綿の布を買って使ってみました。どうも腰が弱く、我々素人にはヘラで上手く扱えません。小谷さん自身は乾漆以外ではこの綿布を使い、乾漆の場合は麻を使うとのことでした。やはり下地自体に強度を持たせるのは麻しかないらしい。その場合は手芸屋とか端切れを求めるが、手に入るなら蚊帳の中古も良いとのこと。それで、教えたもらった名古屋の手芸屋に出向いて見たが、麻はそこそこ高い。オークションサイトで、中古の蚊帳を見ても、けっこうな値段になっている。

以上のようなことを、木工屋みしょうの林さんを見舞った時に話したら、新品の蚊帳の素材が安く手に入ると教えてもらう。それで、ネット検索して探した一軒が、この吉田蚊帳さんでした。値段はそこそこ。漆芸屋で、売られている寒冷紗にくらべれば格安というレベルです。ただ、多少粗めでざっくりした仕事には良いかもしれませんが、細かい仕事用には別に手芸屋で求めた目の細かい布を使うことになりそうです。

公園内の大きなケヤキ。こうした木を見るとつい撮りたくなります。 GXR A12 28mm

公園内の大きなケヤキ。こうした木を見るとつい撮りたくなります。
GXR A12 28mm

さて、午後1時整理券配布、1時半開演の公開講座の前に、国立博物館のすぐ裏の浮見堂で弁当にします。当日は雨が予報されていたのですが、ここなら雨の水面を眺めて食事も良かろうと思っていました。それにここは、さすがのあつかましい公園の鹿も入ってこないので安心です。なお当日は秋らしい爽やかな晴天でした。

浮見堂。これは、一昨年撮ったものです。 GXR A12 28mm

浮見堂。これは、一昨年撮ったものです。
GXR A12 28mm

スケルトン・アンプ その1

木工屋が、ボール盤を持ちだして鉄に穴を開けています。仕事というよりも、あらかた道楽なんですが、スケルトン・シリーズのひとつで、スケルトン・アンプとでもいいましょうか。来月末の展示会でお披露目いたします。

ホールソーで穴を開ける

ホールソーで穴を開ける

このボール盤は、30年ほど前にホームセンターで買ったものですが、久しぶりに使ってみると回転軸の精度は出ていないし、その軸と定盤の鉛直は出ていないしというバッタ物です。一応TOSHIBAブランドの台湾製です。まだ台湾製=粗悪品、中国製=論外というイメージを私自身も持っていた時代で、デフレ前のバブルの只中で、こんなものでも2万円ほどしたと思います。それでも、その当時はハンドドリルに比べて、作業精度・効率も格段に向上して喜んだものでした。

kegaki

これにホールソーを着けて最大・直径50ミリの穴を1.6ミリの鋼板に開けるのですが、定盤に木をボルトで固定して鉋で鉛直を出し直す。それにクランプで板を固定して、切削油をドボドボかけながら、まあそこそこきれいな穴が開きました。この穴のいくつかに嵌めこまれるものが、下のもの。これも20年以上も死蔵してきました。元々はイングランドで、私の出生と同じ時期つまり1950年代頃か、あるいはもっとずっと古くに作られたものだと思います。なにかの因果で、最後は私の物欲でこんな所に流れ着いたのすが、擬人化して、もし心があるならば山椒太夫にさらわれた安寿と厨子王のような気分でしょう。2本は、用途は違いますが同じシリーズのいわば兄弟のような真空管になります。かの姉弟のように素性いやしからぬ麗しい姿をしています。

Mullard EL38とCV378/GZ37

Mullard ブランドの出力管・EL38と整流管・CV378/GZ37

el38_2

まずは、紙の上で色々遊んでみる。

木の仕事展IN東海2014

東海地方在住の仕事仲間とのグループ展・木の仕事展IN東海2014に、出展します。

追々、このブログで見ていただくものを紹介していきたいと思います。是非お越しください。

  • 11月28日(金)〜30日(日)
  • 東桜会館 名古屋市東区東桜2-6-30 TEL 052-973-2223

詳細は、こちらにDMを置いてありますのでご覧ください。画像ファイルです。

DM表面 DM裏面(会場の地図などはこちらです)

トチの古材の碁笥ごけ用の小箱

トチの古材を使った小箱です。碁笥ごけ(碁石を入れる丸い器)を入れるものです。

蓋の内側に朱の漆を塗っています。こわごわと、でも少しずつ色漆を使っていこうと思っています。

トチの古材を使った碁笥(ごけ)入れの小箱

トチの古材を使った碁笥(ごけ)入れの小箱

 

蓋の内側は、布着せをした朱の漆を施す

蓋の内側は、布着せをした朱の漆を施す

おこぼれを頂戴してきました

昨日、またへ行ってきました。久しぶりに福井との県境の峠まで足を延ばしてきました。晴天下、ここにこんな良い樹があったのだと言う再発見のようなものもあって良い気分でした。デジカメは持っていったのですが、カードが入っていなかったという良くやる失敗で写真はなし。でも、こうした時はカメラを出したり、構えたり、写り映えの良さそうな景色を探したりというスケベ根性から解放されて、じっくり邪念なく周りの景色や環境を観察出来ます。場合によれば、その中にゆっくり自分の身を委ねるような安らかな気分に浸ることも出来ます。

若い時は、カメラを首からぶら下げ、土産物を物色するような旅行のスタイルが嫌いで、ずっとカメラ自体を持っていませんでした。高校の時の修学旅行でカメラを持参していなかったのは私だけだったような記憶があります。今は、どこかいつもブログねたを探しているようなさもしさを自分で感じる事があります。

さて、今回も3度目で、あのブナの前に行ってしまいました。でも、結局そこが本来の登山道だったというオチなんですが、それはまたの機会にします。

シシや鹿や、その他山の動物たちのおこぼれを頂いて来ました。帰りの林道に架かるコンクリートの橋の上に、なぜかたくさんトチの実が転がっていて、少しばかり気分も高揚して拾い集めていたところ、同行の人からそんなに拾ってどうするのですか?と聞かれます。だって、楽しいじゃないですか!と答えて、自分でその言葉にハッとしてしまいました。それもまた次の機会にします。

頂戴してきたトチの実、クルミ、クリ

頂戴してきたトチの実、クルミ、クリ

設楽町・段戸裏谷原生林に行ってきました

以前から行きたいと思っていた愛知県設楽町の段戸裏谷原生林に行ってきました。

伊勢湾岸自動車道を使って、四日市からいつもの軽トラで2時間ほど。平日で観光シーズンの谷間の時季なので比較的スムーズに行くことができましたが、豊田松平インターから足助と香嵐渓を経由するこのコースは紅葉シーズンの週末では混雑するかもしれません。段戸湖というルアー釣りのための人工湖の脇に駐車場があり、そのすぐ裏側に原生林があります。

原生林の入り口にある段戸湖

原生林の入り口にある段戸湖 GXR A12 28mm

林地自体はあまり広くはなく、また中の林道や登山道がたいへん良く整備されているため、健脚の人であれば半日もあれば一通り森の中を巡ることが出来ると思います。

植生は非常に興味深いものでした。モミ・ツガの林とブナ・ミズナラの林が混交しており、その中でサワラ、ヒノキ、ミズメ、トチ、カエデ、ホウなどの様々な樹種を見ることが出来ます。代表的樹種については標識も付けられているため樹木観察にはうってつけの場所だと思います。立地や環境から、いつも行くのような奥深い神秘感のようなものはありませんが、それはないものねだりというものでしょう。

標識を頼りにモミとツガの識別方法を探ろうとしましたが、樹皮とか樹姿では結局分かりませんでした。強いて挙げると、ツガのほうが若干樹皮が松のように見えるかなとは感じました。

モミ

モミ

ツガ

ツガ

ミズナラも立派な大きな木が見られましたが、ここでもナラガレにやられて立ち枯れのものも多くありました。

ミズナラ

ミズナラ

ブナ

ブナ

その他にも色々な樹種を見ることが出来ました。

サワラ

サワラ

ホウノキ

ホウノキ