『冬の旅』のディスク 2     Christoph Prégardien

せっかく『冬の旅』のディスクを取り出してみたのだから、しばらく仕事やこうしたパソコン作業のBGMとして順番に流していこうと思いました。ちなみにモーツァルトやバッハが流されている木工所は、いくつかはきっとあるでしょう。ショスタコーヴィッチやアルヴォ・ペルトくらいは聞いている物好きもいるかもしれません。しかし、ハンス・アイスラーやジョージ・クラムなんか聞きながら仕事している木工屋は、日本中でここくらいだろうとか考えて、にやけている事があります。

さて、まったく印象に残っていなかった、というよりつまらなかったと記憶しているディスクからかけてみました。

winterreise pregardien

  • Christoph Prégardien (tenor)
  • Andreas Staier (fortepiano)

となっています。ちなみに輸入版です。テノールの名前は日本語表記ではプレガルディエンとかされているようです。こういうのを見るとギョエテとは俺のことかとゲーテ言いとかいう昔の学生の戯れ歌を思い出します。よくわかりませんが、普通にプレガーディンとかではダメなんでしょうか?

久しぶりに聴いたことになりますが、普通に爽やかに清々しいテノールでの『冬の旅』です。伴奏がフォルテピアノというのも、声の優しい雰囲気にあっていいです。なんでつまらないとか思ってしまったのでしょう?寂寥感とか、ある種の寒々しさのようなものを『冬の旅』に求めていたとしたら、つまらないレコード批評の類を読みすぎて、自分で自分を洗脳していたとしか思えません。声の若々しさ、瑞々しさにこのプレガルディエンギョエテ読み)さんの生年を付属のライナーノートで見ると、1956年!いくらプロの声楽家とは言え、私と同い年で、こんな澄んだうつくしい声で歌えるのか!と思って録音データを見ると1996年の録音で少し安心しました。名前に”é”と、フランス語の文字が入っているので、不思議に思ってノートを続けて読んでみたのですが、普通にドイツ生まれのようです。教会の聖歌隊からはじまり、長じてハルトムート・ヘルのリートのクラスにも参加したとあります。そう言えば昨日、NHK BSプレミアムの朝のクラシック倶楽部で白井光子さんと一緒に元夫のヘルが出ていました。白井さんは白髪も美しく綺麗なお年のめされ方をされていて、とっても素敵でした。若い頃は甘いマスクで、それなりに二枚目だと思っていたヘルの方は顎がたるんだフヤケた爺さんになってました。

CDのジャケットのような小さなものに、細かい字でごちゃごちゃ書かれても、老眼の進んだ目ではいくらメガネをかけても読みづらい。そうした時は、簡単な説明書の類はデジカメで撮って背面の液晶で拡大表示して読んだりします。すこし長文でじっくり読みたい時はスキャナーで読み込んで拡大してプリントアウトします。便利になったと喜ぶべきか、不自由になりつつある我が身を嘆くべきか、よくわからなくなります。

ライナーノート

中高年はCDなど買わなくともよいと言われているようなライナーノート

 

ただ、今このディスクを買うかと言えば、買わないと思います。5,000円でリサイタルが聞けるとすれば、そちらはきっと行くでしょう。ちなみに年明けの1月12日に、名古屋・伏見・電気文化会館のザ・コンサートホールでのクリスティアン・ゲルハーヘルのリサイタルはチケット予約してあります。料金は6000円ですが、会員割引で4800円になります。

サイト移転のお知らせ

ホームページのサイトを移転しました。

正確には、並列して運用していた古い方のサーバーを閉じたということです。ホームページの方を比較的最近、ご覧いただくようになって、とくに不都合なく閲覧できている皆さんは気になさらないでください。

3年ほど前からレンタルサーバーを借りて、roktal.comというドメインをとって運用していました。このブログもそちらの方にWordPressをインストールして使っています。ただ、色々思うことあって、もともとのプロバイダー付与のサーバーの方も並列して使っていました。しかし、更新も二重になり、さすがに面倒になりこのたび一本化することになりました。

もし、ご覧頂いている人でホームページの方を古いURLで登録されている場合は、変更をお願いします。

宜しくおねがいします。

木工房ろくたる・服部篤

トチの古材 その1 削り出してみた

木の仕事展IN東海2013にトチの厨子を作って出展するつもりでいました。そのため手持ちのトチの端材や、古材を引っ張り出して、それに合わせて木取りや寸法を考えて頭を悩ませていました。結局、色々あって間に合わなかったのですが、その過程で一枚のトチの板を発掘しました。長さ・900ミリx幅・450ミリx厚み・27ミリほどの板で、両木口には本ざねと3本の釘で端ばめが打ち付けられていました。きれいな中杢の板ですが、それ以外とくに目立った特徴もなく素直そうな板で大きさも手頃なので、なにか自分用のものをいつか作れればと考えて保管してありました。

トチの古材、鉋で削り出した

鉋で削り出したトチの古材 GXR A12 50mm

 

この板は、実はまだ京都に住んでいた頃、大型ゴミとして捨てられていたのを拾ってきたものです。それから、おそらく30年近く、その間には京都で2回、大阪で3回引越しをして、結局いま四日市にいます。ずっとどこか陽の当たらないところに置いて、でも捨てることも出来ずに持ち続けてきたことになります。

さて、木味を確かめるために、端ばめを外して灰色にくすんだ木表に鉋をかけて見ました。木端に近いところから綺麗な細かい縮杢が出てきます。これは、と思って一通りめくってみると中央の板目の部分を除いて、ほぼ全面に細かい縮杢が出ています。目立った傷もありません。板目部分が、いわゆるタケノコで、残念ながら両木口からそれぞれタケノコが出て中央部分でくびれながら合わさる出会いではありません。あと板目・タケノコの根本あたる部分に微小な葉節がありますが、これは例えば拭漆で仕上げればまったく問題ありません。総じて、私がこれまで扱った板の中で一番上品で、味の良い板のひとつだと思います。もちろん、これまでも様々な杢と呼ばれる板を使ってきましたが、私はそもそも板目のグネグネした板が好きではありません。加えて、目玉おやじが集会をしているような、大阪のオバちゃん定番のヒョウ柄のような、または雷様の腰巻のような縞々模様は、よほど上手に使わないと下品な成金趣味に堕するように思います。

トチの古材、縮杢

トチの古材 縮杢 GXR A12 50mm

 

トチにしては全体に赤い。トチの場合は偽心材と呼ばれる赤身が嫌われ、辺材の白い部分のみからなる板が好まれます。それにトチというのは心材(赤身)の部分の少ない樹種だと認識しています。また山のトチノキを見ても、丸太や板にされた物を見ても、トチは比較的ウロの入りやすい、通直な材の取れにくい樹のように思います。他にも入皮や腐れ、アオという変色などの傷が多い材です。まさか赤身だけでこんな素直な材がとれるのでしょうか?あるいは全く別の樹種かもしれません。もし、どなたかこの記事をご覧のかたで、見識をお持ちなら教えてくださると嬉しいです。しかし、板にされてからも少なくとも30年、枯れた材は実に気持ちよく鉋にかかりますが、その感触はトチそのものです。

これは、とりあえず慎重にまず木作りをし直さなくてはと考え、木表の反りとねじれを取りました。その上でプレーナーで厚みだし。途中応力が変わって再び反り・ネジレが出ます。それを木表から鉋で直すこと3度、一旦それなりにきちんとした平面と厚みの揃った板になりました。結果は、仕上がりで厚み22ミリ。5ミリ分がムラ(ねじれ)取りと厚み出しで消えたことになります。それと元からあって蟻桟用の溝が4ミリから5ミリほど残りました。この板を使って、文机か座卓を作りことは決めているのですが、どういう形とするか?二つの案で悩んでいますが、養生を施して暫く頭を冷やしてよく考えることにしました。

続きます

『冬の旅』のディスク

本当に久しぶりにCDを買いました。前に買ったのは、去年の今ころ、名古屋伏見の電気文化会館で聴いたサンドリーヌ・ピオーのリサイタルと同じ曲目のアルバムを、予習のため買って以来だと思います。

買ったのは、ORFEOレーベルのディースカウとポリーニの『冬の旅』、1978年のザルツブルグ・リサイタルのライブです。たまたまネットで予告を見つけて予約して買いました。ディースカウの歌自体はもう食傷気味ですが、ポリーニの伴奏を聴きたかったのです。

ディースカウとポリーニの『冬の旅』

ディースカウとポリーニの『冬の旅』

ディースカウは、この録音からしばらく経った1980年か81年に大阪でのリサイタルで同じ冬の旅を聴いて、たいへんがっかりしたことを覚えています。その頃にフィリップス・レーベルに録音したブレンデル伴奏のディスクもひどい出来でした。さすがのディースカウもこの頃は不調だったのかもしれません。ただ、このディスクでは、そんなにひどい印象も受けません。ピアノの方に神経がいっているせいか、もうディースカウも亡くなって暫く時間が経って、過去の人というイメージが私の中で定着してしまっているせいからでしょうか。

ポリーニのピアノはきれいです。伴奏という事で決して出しゃばっていませんが、レガートの音も粒だってキラキラと流れていくように奏でます。和音も濁ったような感じもなく響きます。本当に上手な人が演奏すると、こうした簡単な伴奏でも美しい音楽になるんですね。

さて、冬の旅のディスクは一体何枚買ったのだろうかと、ラックから取り出してみました。どこかに紛れているものもあるかもしれませんが、計13枚。ほかにもLPが4〜5枚あったはずです。フェティッシュなコレクターからみれば、それだけかとなりそうですが、普通の人から見れば、アホかという、まあ中途半端な数です。斎藤晴彦と高橋悠治というオチャラケや弦楽四重奏伴奏というキワモノもありますが、シュライヤーとリヒテルのライブ3種類といった定番がなかったりします。ジャケットも見ても、半数以上はまったく印象に残っていません。ハンス・ホッター、ボストリッジ、女声のシェーファーとシュトゥッツマン(Stutzumann ドイツ語翻訳読みでは普通にシュトッツマンで良いのでしょうが、このややこしい表記が一般になっているようなので従います)、それとディースカウとブレンデルあたりが印象に残ります。ディースカウとブレンデルのディスクは、私が初めて買ったCDです。

手元にある『冬の旅』のディスク

手元にある『冬の旅』のディスク

前の冬はシュトッツマンをよく聴きました。この冬は、気分からいってハンス・ホッターあたりを聴きたいかなあと考えています。

木の仕事展IN東海2013

久しぶりのグループ展への参加でした。

今回は、新作として自分で勝手にスケルトンシリーズと名付けているデスクとスツールを出展しました。
詳しくは、こちらに記事があります。

ブログデスク スケルトンシリーズ

ブログデスクとスツール

ブログデスクとスツール RICOH GXR A16

 

あと、旧作になりますが古材を使った仕事も見てもらいました。
詳しくはこちらです。

(えにし)の木

ふきうるしとちおきどこ

拭漆栃置床 GXR A16