高滝から如意輪寺に抜ける
登山道に入ってしばらく登ると、高滝に出ます。ちいさな滝ですが、たいへん美しい景観です。本居宣長も吉野を訪れた際にここを通ったとのこと。『菅笠日記』の該当部分を引用した看板が立っていた。昔から吉野から喜佐谷を通って離宮のあったという宮滝に抜ける街道であったらしく起伏の少ないゆるやかな登り勾配の道が続きます。稚児松地蔵と呼ばれる辺りからは、今度は一転して下りの道が如意輪寺に出るまで続きます。周囲は杉の植林地で、比較的良く手入れされていて、陽も入るし風も通ります。それなりに爽やかですが、やはり植林地というのは面白くない。それに先週後半の暑さの影響か、身体に少し変調をきたしていたこともあってあまり楽しめませんでした。
少し急な雨の通り道のような岩場を下りきると再びアスファルトの車道に出ます。そこには如意輪寺の駐車場があって案内に從って進むとお寺がありました。南朝勅願寺・小楠公遺髪奉納の地ということで、格式の高い、私のような不敬の輩が足を踏み入れるのも憚れるような所かと少々訝しく思っていました。境内に近づくと子どもの声がします。どうやら遠足で来ているようで、ちょうどお昼の時間帯で集まって弁当を食べるところでした。小さくこじんまりしたお寺で、子どもがかまわず走り回っていますし、庫裏というか休憩所のようなところでは土産物が売られていました。つまり普通の地元のお寺という雰囲気でなんだか安心しました。ここもそうですし、川上村とか十津川村とか南朝の関わりで尊皇思想の根付いた土地柄と言われています。そうした遺構のいくつかも訪れました。いずれも居丈高な、為にするような妙な政治的な装いがありません。いわばこの地域の風土とか民間信仰のような自然なものになっているのでしょうか。