先週の3日間、遅い目の夏休みに入った名古屋のお店・紗羅餐本店の補修に入る。今回は、長さ8m✕幅1mの2枚のブビンガのL型カウンターのウレタン塗装のやり直しと、長さ4m✕幅1mのやはりブビンガのテーブルの拭漆のかけ直し。これを3日間でやり4日目にはお客さんを迎えなくてはならない。手がけてから8年ぶりに手を入れることになる。
L型カウンター。厨房を養生して再塗装。
ウレタンは、2日でやり終えて、残り1日でVOC(揮発性化学物質)を飛ばせば良い。漆はこの雨続きの天候が幸いして、普通の生漆でもまる1日あればなんとか乾燥しそうだが、不特定のお客さんが使うことになる飲食店の什器としては心配が残る。昨年使った京都の佐藤清代松商店のLTH漆なら、冬場に室なしでちゃんと乾燥した。佐藤豊会長に電話で相談したら、今の天候なら間違いなく1日で乾燥するが、やり直しの場合は油や手汗が少しでも残っていると難しいとのこと。木地のまま最初からやるより、使い込んだものを拭漆をかけ直す方が手間もかかり難しい。飲食の什器なら、一度下地から全部剥がすくらいのつもりでやった方が良いとアドバイスを受ける。
ウレタン塗装のカウンターは、オープンキッチンの厨房側の一枚には、8年分+新装前の2年分の厨房からの油や手汗がこびり付いている。サンダーではペーパーの目に詰まって取れない。ステンレスのコテをスクレッパー替わりにして、小削ぎとる。その上でシンナーで洗ってサンダーのかかる状態にしてから研いでいく。これを8m✕1mにわたってやらなくてはならない。屋内作業としてはかなり不健康だ。
その上からシーラーを2回、半艶のクリアーを2回刷毛で塗る。以前の2液製のものと違って1液製で薄め液もない。扱いの面では紛れも少ないが、硬化が遅い。塗布後、シーラーは空研ぎ、フィニッシュは水研ぎをしたがカタログにある硬化時間(それぞれ2時間)を経過しても十分に硬化せずに、研げない。環境とか健康への対応で業務用の塗料もしだいに水性化しつつあり、以前使っていた2液製のウレタン塗料なども製造中止となっている。硬化時間など、少なくとも使い勝手の面では性能的に追いついていない様に思うが、それはこちらの発想を変えなくてはいけないのだと思う。
再塗装の終わったブビンガのカウンター。長さ8メートル!
再塗装したL型カウンターのもう一枚。
拭漆のテーブルの方は、8年間の使用で表面の漆の塗膜はほとんど劣化して所々に輪染みも出来ている。佐藤会長のアドバイス通りに、とりあえずその輪染みが取れる程度には研磨するつもりで、#150→#240→#400とサンディングを繰り返す。その上に、テレピン油で2倍程度に希釈したLTH漆を塗る。一昼夜置いてチェックすると部分的に輪染みが残っていた。しかしながら硬化自体は十分で、空研ぎをしてもサラサラと研磨できる。もう一度輪染みを削り落として、今度はLTH漆の原液を塗って摺り込む。都合2度しか重ねていないが、それでも見違えるようにきれいにはなった。
拭漆をかけ直したブビンガのテーブル。こちらは長さ4メートルある。
さて、今回も木工房またにの若森昭夫君に応援を頼んだ。この店の仕事自体を一緒にやってもらっているので、説明抜きで要領も分かってもらえる。それに、拭漆とウレタン塗装と両方ができる人間は、知っている限り他にいないのだ。実は、若森くんは先月お母様を亡くされたばかりで、まだ四十九日の法要も済ませていない。それを分かってあえてお願いした。私も昨年、母親を亡くした後まだ四十九日の前に、普段なら受けないような納期的に厳しいつまらない下請け仕事を受けた。とりあえず体を動かしていると気が紛れるのだ。その時も、立場は違うが若森くんに応援をお願いした。その事を彼もよく分かっていて、今回も快諾してくれたのだ。