拭漆2 錆着け

木地固めが終わると、導管の大きな環孔材の場合は、それを埋めるために錆着けをします。錆(漆錆)というのは、固く練った砥粉にそれとほぼ同量の生漆を混ぜて、またよく練って作ります。それを、画像のようにヘラをつかって導管に摺りこむようにして着けていきます。小さなものになら、ボロを丸めたタンポで擦り込めばよいでしょうが、ある程度の大きさのあるものは、ヘラを使ったほうが良いと思います。その理由は下に書きます。

2寸のヘラを使っての錆着け

2寸のヘラを使っての錆着け

漆というのは、乾燥(硬化)の難しい素材で、それがかぶれの問題と並んで使用をためらわせる理由になっています。しかし、この漆錆の場合は、練った砥粉の水分と反応するためか、刷り込んでいる最中から、どんどん粘度が上がってきます。タンポでゆっくり刷り込んでいると、はじめに施した部分が硬化していきます。材の表面に不必要に残った部分や、むらになった部分をあらためて拭き取ろうとすると、かなり力を入れないときれいになりません。それに摺り込むタンポがはやく固まってしまい、その都度交換する事になり漆をその分無駄にしてしまいます。

ですから、材に合った比較的大きなヘラを使って、さっと摺り込むと作業としては楽で、合理的です。一度、ある塗師の人の錆付け作業を見学させてもらった事があるのですが、素早く力強く、グイグイ摺りこむ感じで、それでムラなくはみ出しもごくわずかで、それもさっと修正しながら仕上げてしまいます。錆付けは、本堅地を含め塗りの下地作りの基本作業になるので、これくらいの速度と効率でやれて当たり前という事なんでしょう。そういう塗師の人のマネはとても出来ないにしても、この作業はヘラを使うべきだと思います。

錆着け1回目の終わったクリ板。

錆着け1回目の終わったクリ板。

完全に導管を埋めるには、この状態で出来れば2〜3日置いて錆の痩せを見て、さらに錆を重ねます。2回行うとかなり良い感じで埋まります。塗装の強度や汚れの付着しにくさとかを考えると2回くらいはやった方が良いかもしれませんが、導管の凹みをある程度残した方が木目が映えて良いという選択もあります。このあたりは、使う材や用途、それに使う人の感覚によってそれぞれだと思います。

命の海と平和を守る! 相馬由里さん(辺野古「平和丸」船長)の報告会

一昨日・13日、辺野古「平和丸」船長の相馬由里さんの講演に行ってきました。相馬さん、その冒頭で今日から辺野古を離れてしばらく息抜きが出来るとか言って、いたずらっぽく笑っていました。でも、講演の最後に今日もカヌーで海に出た仲間の女性の抗議の叫びを、揚げられたSNSの音声で流しながら声を震わせていました。

支援要請のタオルを掲げる相馬さん

支援要請のタオルを掲げる相馬さん

相馬さんは、介護福祉士として働きながら好きなダイビングで沖縄に通っていたそうです。どうせならと、まず西表島に移住して、それから16年。その間にお金がなくなって員弁のデンソーに季節工として2年半いたこともあったとか。辺野古の米軍新基地(移転ではない、新しい基地なんだ!)に反対するのは、何より好きなきれいな海を守りたいから。それに、仕事で沖縄戦で受けた傷を持った人の介護をしたから、また苛烈な戦争体験の一端を聞いて、戦争はダメだと思ったからと言う。

働きながら、反対運動に忙殺されながら船舶免許を取った。それに昨年はケアマネージャーの資格を取ったそうです。ケアマネは受験資格が厳しい上に問題もむずかしく合格率3割程度と言われています。居丈高なところの全くないむしろ穏やかで謙虚な人ですが、一方でものすごく頑張る人だという事が分かります。そんな真面目でよく働く心優しい人が、仕事を通して、趣味や生活を通して、基地の問題に向き合わざるを得なかった。そして今、仕事を辞めて専従として活動している。仕事を辞める決断がついたのは、施設の利用者の人に相談したら、私が今、体が動けばすぐにでも辺野古へ行くと逆に言われたからだとおっしゃっていました。


さて、会場の聴衆を眺めて、相馬さん曰く。
今日は高齢の方が多いですね。もし、お子さんやお孫さんが、この夏にでも沖縄に行くことがあれば、そこに米軍の新しい基地が作られようとしていると、教えて上げて下さい。もしご自身が沖縄へ行かれたら、なぜ隣に米軍の車が当たり前に走っているのか、そのAナンバーとかYナンバー、なぜイオンでドルが使えるのか、なんでもいいから米軍の存在と、それが当たり前になっている沖縄の現実というものを感じて下さい。

何かを要求するのでもなく、もちろん上から目線で物を語るのではなく、機会があれば自分で感じて欲しい。そうした素直な目は持って欲しいという訴えです。心に染みます。


戦争になぜ反対しなかったそう(さか)しげに我ら言ったはず

先週の朝日歌壇に佐佐木幸綱選で載った春原さんという人の歌です。馬場あき子さんや高野公彦さんの選ではありません。安倍晋三とその茶坊主たちや、名前を出すのもおぞましい大臣病の宗教政党指導者たちのゴリ押しする戦争法案や憲法改悪への危うさを心ある人は感じている。ここへ来てまた橋下徹が出てきた。安倍と3時間の会談だそうだ。

6月15日というのは、今から55年前、日米安保条約の改定に反対するデモで、国会南門で樺美智子さんが亡くなった日です。私たちが学生の頃は、まだその事が語り継がれていました。そして、ショボイながらデモをしました。それを、私たちは語り継ぐことが出来なかった、しなかった。今の若い人の大半は樺さんの名前も知らないでしょう。

まずは、なんでも現地に行くことだと思いました。それと、津のJFEで辺野古基地のケーソンが作られようとしている。それに反対するビラまきなどもこの日の主催者が工場前で行っている。これは行かねば、行きたいと思います。

拭漆1 柿渋下地

クリの薄板(6ミリ厚)、420✕360ミリが16枚。框で組む棚の側板になる。仕上げは拭漆とするが、その下地として柿渋を塗る。木地固めというより吸い込み止めになる。この16枚の板の裏表で表面積は4.8平米(平方メートル)となる。三六合板3枚分だ。これを、クリのように中程度の密度の散孔材に、テレピン油で2倍ほどに希釈した生漆を塗布するとしても500gでは足りないだろう。漆を充分に染み込ませて木地を固めるのが、本来のやり方かもしれないが、いかにももったいない。経済的にという意味ももちろんあるが、貴重な漆の使い方としてもどうかと最近は考えている。この点については、あとで触れたい。

クリの薄板に柿渋を塗布する。

クリの薄板に柿渋を塗布する。

それに、渋自体も、完全に硬化すると撥水性、防腐性を伴った強固な塗膜を作る。その意味では、同じ自然塗料として漆にも負けていないと思う。他に、漆の下地として膠と砥粉を使った半田地、ウレタンなどの化学塗料を使ったものがあるようだ。仏壇などは、後者が今は主流になっているらしい。私も一度だけ、ウレタンのサンディング・シーラーで下地を作って拭漆をしたことがあったが、塗膜が強すぎて漆が染み込まず、拭漆の良さがなくなってしまうと思った。塗りの下地としては良いのかもしれない。

朝日俳壇から

暫く更新をサボりました。さすがに仕事がたまってきて、季節の変わり目に弱った体力がもちません。パソコンの前にちゃんと座る前に、床についてしまう日が続きました。こうした折は、気軽な題材を上げて再開するのが良いか。


あの世では親を解かれよ紋白蝶

昨日の『朝日俳壇』に金子兜太選で掲載された澤田さんという人の句です。

おそらくは歌舞伎・人形浄瑠璃の演目『蝶の道行』を念頭に置いたものと思われます。私は、もうずいぶんと前になりますが、これを人形浄瑠璃で見ました(音楽・ディスク・オーディオ日記・『蝶の道行』)。いがみ合う親同士とその主家の因縁によって心中の道を選ぶ若い男女が、最期に死装束のような白い蝶の衣装となって舞い、倒れます。

まあ、そんな今で言う毒親の因縁云々ではなくても、親を看取ってある時間が過ぎると親を解かれよという言葉に反応してしまう人はいるのでしょう。もってまわった言い方をしました。句の作者の意図したものとは違うかもしれませんが、私は反応してしまいました。この秋で、丁度父親の7回忌、母親の3回忌となります。もう2枚の写真と実用品だけ残してあとの遺品は全部処分することにします。それに特に意思表示をしたわけでもなく、私も親の宗派の門徒会に入れられてしまっています。もうそれも、これを区切りで解かれても良いかと思っています。