古いお寺の建具をテーブルにしました。幅・2000、奥行き・1400という大きなものです。
このお寺は、以前に火事でほとんど全焼してしまったようですが、わずかに焼け残った建具をなんとか使いたいとの事でした。建具の大きさは、1950ミリx1350ミリ、框の厚みも36ミリあります。格子の桟の部分は相応に傷んでいますが、1寸2分ある肝心の框はしっかりしています。全体をテーブルの幕板に落とし込んで、その上からガラスを被せればなんとか形になるかと思いました。
ガラスは、最初8ミリを考えていましたが、それだとこの大きさ(1950×1350)で、比重を2.5とすると53kgほどになります。それで、5ミリにしたのですが、それでもガラスだけで、33kgあります。建具の下の部分に幕板をつなぐ桟を補強して、框から1分チリをとってある格子の桟の部分に、何箇所か3ミリのゴムをクッションとしてかましてあります。それと落とし込みの隙間(遊び)を極力小さくしてガラスがずれたりガタつかないように気をつけました。
木部は、買って3年乾かしたトネリコを使っています。固く粘りのある良材です。よくあるヤチダモとは強度も見た目も比較にならないほど良い材です。北米材のホワイトアッシュと雰囲気は似ていますが、木目はより上品です。ゆっくり天然乾燥したせいか、固く粘りのある材ですが、鉋はさくっとかかり気持ちがよい。楽しく仕事が出来ます。建具とお部屋に合わせてワイピングステインで、着色しています。その後、2種類のオイルで固めています。
さすがに、この大きさですと、完成品の状態では搬入が難しいと思われたので、妻手の幕板は現場で組みました。これくらいになると、ちゃちな玄能ではホゾを打ち込めないので、カケヤを使います。そうした荒っぽいやり方にも慣れた木工房またにの若森昭夫くんに今回も手伝ってもらいました。服部さん、もうこうした大きな仕事はしないと言ってませんでしたか?
と言われましたが、やはりこうした妙に規格外の大きさのものとかが、ワクワクして好きなのです。それと古い部材などを転用するのも、実はかえって手がかかったりして面倒なのですが、それも好きなんだなあとあらためて思いました。そう言えば、少し前にも伐採された学校のサクラをテーブルにするというややこしい仕事をしたことがありました(「ソメイヨシノのテーブルを元の学校に納める」)。
お施主さんが、ガラスの下、格子の間のすりガラスの上に貝殻とかアクセサリーを載せてさっそく遊んでくれていました。