木工屋が、ボール盤を持ちだして鉄に穴を開けています。仕事というよりも、あらかた道楽なんですが、スケルトン・シリーズのひとつで、スケルトン・アンプとでもいいましょうか。来月末の展示会でお披露目いたします。
このボール盤は、30年ほど前にホームセンターで買ったものですが、久しぶりに使ってみると回転軸の精度は出ていないし、その軸と定盤の鉛直は出ていないしというバッタ物です。一応TOSHIBAブランドの台湾製です。まだ台湾製=粗悪品、中国製=論外というイメージを私自身も持っていた時代で、デフレ前のバブルの只中で、こんなものでも2万円ほどしたと思います。それでも、その当時はハンドドリルに比べて、作業精度・効率も格段に向上して喜んだものでした。
これにホールソーを着けて最大・直径50ミリの穴を1.6ミリの鋼板に開けるのですが、定盤に木をボルトで固定して鉋で鉛直を出し直す。それにクランプで板を固定して、切削油をドボドボかけながら、まあそこそこきれいな穴が開きました。この穴のいくつかに嵌めこまれるものが、下のもの。これも20年以上も死蔵してきました。元々はイングランドで、私の出生と同じ時期つまり1950年代頃か、あるいはもっとずっと古くに作られたものだと思います。なにかの因果で、最後は私の物欲でこんな所に流れ着いたのすが、擬人化して、もし心があるならば山椒太夫にさらわれた安寿と厨子王のような気分でしょう。2本は、用途は違いますが同じシリーズのいわば兄弟のような真空管になります。かの姉弟のように素性いやしからぬ麗しい姿をしています。