昨日11月3日、第66回正倉院展に行ってきました。例年、自営業の気安さで平日に訪れているのですが、今年はちゃんとしたお勤めの人に同行を願ったために祝日の観覧となりました。でも、そのおかげで公開講座を聴くことが出来て、これがたいへん良いものでした。今まで、こうした講座は、土日の開催ということで、端からスルーしてきたのが悔やまれます。
これもここ何年かの恒例のように、まずは奈良町商店街の菊一文字に。今年もご夫妻とも健在でお店に出ておられる。ケースの中には、東大吉銘の丸刃の彫刻刀が2本だけある。もう残っているのは、これだけだと奥さんがおっしゃる。ケースから出してもらって確かめると2分(6ミリ)と4分(12ミリ)とちょうど持っていないサイズだったし、これも何かの縁とか例によってこじつけて買う。去年は、鯵包丁を買った。その前は、おろし金とか、彫刻刀とか、切り出しとか・・・正倉院展に合わせて最近は毎年寄らせてもらっている。今年もお二人ともお元気そうで嬉しいですと挨拶。四日市と名古屋から来たと言うと、名古屋からは毎年来てくれる人が他にもいて、ことしは裁ちばさみの研ぎを依頼され置いていったとの事。もうかなり高齢とお見受けするご主人が今でも研ぐのだそうだ。
そこから、通りがかった奈良町物語館で若い作家さん10人ほどのクラフト展を覗いて、吉田蚊帳で、蚊帳の素材となる生成りの麻布を買いました。漆の下地用(布着せ)です。
前に、名古屋の小谷漆店で漆の下地の布着せについて教えてもらいました。一般的には寒冷紗(麻)と言われているが、今、輪島ではこれを使っているといって見せてもらった木綿の布を買って使ってみました。どうも腰が弱く、我々素人にはヘラで上手く扱えません。小谷さん自身は乾漆以外ではこの綿布を使い、乾漆の場合は麻を使うとのことでした。やはり下地自体に強度を持たせるのは麻しかないらしい。その場合は手芸屋とか端切れを求めるが、手に入るなら蚊帳の中古も良いとのこと。それで、教えたもらった名古屋の手芸屋に出向いて見たが、麻はそこそこ高い。オークションサイトで、中古の蚊帳を見ても、けっこうな値段になっている。
以上のようなことを、木工屋みしょうの林さんを見舞った時に話したら、新品の蚊帳の素材が安く手に入ると教えてもらう。それで、ネット検索して探した一軒が、この吉田蚊帳さんでした。値段はそこそこ。漆芸屋で、売られている寒冷紗にくらべれば格安というレベルです。ただ、多少粗めでざっくりした仕事には良いかもしれませんが、細かい仕事用には別に手芸屋で求めた目の細かい布を使うことになりそうです。
さて、午後1時整理券配布、1時半開演の公開講座の前に、国立博物館のすぐ裏の浮見堂で弁当にします。当日は雨が予報されていたのですが、ここなら雨の水面を眺めて食事も良かろうと思っていました。それにここは、さすがのあつかましい公園の鹿も入ってこないので安心です。なお当日は秋らしい爽やかな晴天でした。