今日は仕事を早めに切り上げ、雑種犬タローの散歩も済ませて、名古屋伏見の電気文化会館・ザ・コンサートホールに行ってきました。マーク・パドモア(テノール)とポール・ルイス(ピアノ)によるシューベルトの『冬の旅』。イケメン二人のコンサートで、女性客がいつもより多かったか?席は6割ほどの埋まり方。ここでの声楽のコンサートでは、こんなものと思います。
同じ組み合わせでのCDは、あまりぱっとしない印象だったのですが、実際の演奏はずっといい。冒頭の
Frend bin ich eingezogen,
Frend zieh’ ich wieder aus.余所者としてやってきて、
出てく今も、やはり余所者。
で、もうすっかり殺伐とした出口や希望の見えない世界に引き込まれる。『冬の旅』なんて長ったらしい歌曲集は、もうずっとながら聴きしかしてない。だから曲も歌詞もあらかた諳んじてはいるが、あらためてこうして目の前でじっくり聴かされるとこんなに寒々とした暗い世界だったんだ。これをかつてのハンス・ホッターのような重たいバスで歌われたらいやだろうな。
Ein Tränen, meine Tränen,
Und seid ihr gar so lau,
Daß ihr erstart zu Eise
Wie kühler Morgentau?涙、わたしの涙、
生ぬるすぎて、
凍ってしまう。
朝露のように
コンサートの最後、「辻音楽師」の最終節でパドモアさん、1歩前に進み出て、声を落として切々と歌う。
Wunderlicher Alter,
Soll ich mit dir geh’n?
Willst zu mein Liedern
Deine Leier dreh’n?ジジイ、
一緒に行ってもいいか?
オレの歌に合わせて、
伴奏してくれや。以上、いづれもヴィルヘルム・ミュラーの詩を拙訳
何度も拍手に呼び出されるが、いわゆるアンコールはなし。うん、この後に何を歌っても白けるだけだ。