昨年の秋までは、立ち枯れていてもなお「山」の門番として矜持と威厳を持って存在している。そんなふうに勝手に思い入れていたトチの木が、この冬の雪には耐えられなかったか、ついに倒れていた。
異形と言うべきか。もう少し長い時間のスパンで、土に戻るまで見守り続ける強い意志を持った狛犬のようにも思える。あるいは「泣く女」のピカソがキュービズムの手法で描くと、こんな形としてくれるだろうか。
どうも近辺で遭難があったらしい。峠の手前まで「○○山岳会」と手書きのステッカーのたくさんの車が乗り付けられていた。下山時には、そこに通常の登山客とは違う雰囲気の団体がいて、こちらの歩いたルートを聞かれる。