金欠の時に売り払ったセトロン・300Bの代わりを買う。大阪日本橋に行けば、安い中国製が手に入ると聞いたが、さすがに大阪まで出る暇がない。それと交通費も考えると、ネット通販で中国製以外では一番安かったEH 300Bと言う物にした。ロシア製でステアータイト(磁器)ベースのもの。
着いた物は画像のようなもの。ロシア製の真空管は、以前にも何種類か求めたことがあったが、いずれもガラスが厚く中の電極もしっかりと作ってあって印象は良い。EHというのは何だと思っていたが、Electro Harmonixという楽器とその周辺機器のメーカー(商社?)のようだ。真空管は、おもにギターアンプ用のものをロシアで作って自社ブランドで販売している。それにしてもパッケージとベースに印刷された人面はいかにも趣味が悪い。まさか、これはブランド名になっているハルモニア(ギリシャ神話の調和を司る女神だそうな)のつもりだろうか?
手もとにノーブランドの中国製(20年ほど前に購入)があるが、それと比べるとガラスの厚みがずいぶん違う。それとステアタイトのベースもあってかなり重い。細かいことになるが、売ってしまったセトロンの300Bはフィラメントを釣り竿というかジブクレーンのミニチュアのようなもので釣ってあった。本家のウエスタン・エレクトリックの物もそうらしい。いま手元にあるロシア製と中国製はスプリングバネで釣ってある。この真空管の前身である300Aが作られたのが1933年とある(75YEARS OF WESTERN ELECTRIC TUBE MANUFACTURING / Bernard magers)。この頃は、コイルのバネより針金の張力そのものを利用したこうした方式のほうが信頼性が高かったのか、はてまた安上がりだったのか良く分からない。
こんなことで特性が大きく変わるとも思えないが、見た目は釣竿式のほうが精密感というか手が込んでいるぞ感があって良い。高橋由一の絵で、こうして池に釣竿をのばしたものがあって、それがだらりとした風景画に凛とした緊張感を与えていたなあとか思い出す。真空管アンプなんて、見た目と自己満足感がほとんどすべてなので、こうした要素は大きい。
その他、電極をガラス管内部に保持するためのマイカの形状、ゲッターの飛ばし方、ベースの材質・ピンの有無など目についた形状の相違をまとめておく。なお、本家本元のウエスタンの物は所有したことがないので分からない。セトロンのものは、忠実なコピーというかそもそもOEM生産していたものなのか、これもよく分からない。それに対して、ノーブランド中国製はコピー商品だが面倒な部分は適当に間に合わせましたというまがい物(今の中国製は知りません)、ロシア製は電極の構造が同じで特性さえ合っていればいいのだろう、あとはこちらのやり方で行くぜという感じのコピー(というより同等品か)。それはそれで潔い。ロシアン・ライカもそんなところかなあ。あれだってライカのパチモンにはちがいないけど、堂々とZorkiとかFEDとか自分のブランドつけてるから、まあ、ある意味すごいなと思います。
セトロン | ノーブランド中国製 | EH ロシア製 | |
上部マイカ | 三角形、3枚止め | 丸型、2枚止め | 丸型(2重)、鋸歯状 |
フィラメント支持 | 釣り竿状 | コイルスプリング | コイルスプリング |
ゲッター | 1カ所 | 1カ所 | 2カ所 |
ベース | ベークライト(?) | ベークライト(?) | ステアタイト |
バヨネット・ピン | あり | あり | なし |
電極の向き | バラバラ | バラバラ | 揃えようとしている? |