鉋は、油台にしないほうが良い 1

私は、鉋台に油を染みこませる油台という事をしません。理由は、色々あるのですが、油台の鉋を買ってしまい、使ってみることで、逆にそれを裏付ける事が出来たと思います。以下、何回かに分けて記事にします。

油台のメリットは実はないと思う

白木の台にわざわざ油を染み込ませて汚い油台なるものにする理由ですが、おもに次の2点があげられています。

  1. 切削抵抗を少なくする
  2. 鉋台の反りなどの歪みを減らす

まずは、鉋台の下端の滑りを良くして切削時の抵抗を下げるという理屈です。素人の人か、まだ経験の浅い人には、もっともらしく聞こえるかもしれません(私も、30年程前にはそう思った)。しかし、これには実際は、ほとんど意味がありません。

普段使っている鉋の下端。

普段使っている鉋の下端。

私の普段使いの鉋を並べて、台下端の状態を調べてみました。普段は特に意識もしていないのですが、あらためて触れてみると、何もしてなくてもよく滑ります。不思議なもので、台直し鉋で軽く横削りをしても、そのすべすべ感は変わりません。これらの鉋のうち、刃口埋めをしてあるものは、いずれも20年前後使っているものです。その間に削る材と擦れ合って、相手の木の樹脂が染みこんできたからとも考えられます。でも、一番手前のものは、購入してから8年、使い始めて2年ほどですから(→針葉樹を削る鉋1)、まあ単に摩擦で磨かれてきただけでしょう。たしかに、今回買った油台の鉋の下端は、これらの鉋よりさらにすべすべしています。しかし、実際に使ってみてこの台の鉋だけが取り立てて軽くひくことが出来るとも感じません。鉋を軽く、したがって材を美しく削るには、まず刃の切れが第一です。もうこれで8割か9割くらいは決まってしまうと考えて良いでしょう。あとは、刃の出具合(切削量)とか、裏金の効かせ具会、台下端の形状など様々な要素が関係してきます。まあ、その中で、油が染み込ませてあるか否かなどは、実際にはほとんど関係していないと思います。それに対して、後で触れますが油台の場合、下端だけでなく台の側面(木端)までが滑りやすく、作業効率を損ねることになるように思います。

右が寸六、あとの2台は三木の横山さんの寸四より狭い小鉋でよく切れて使いやすい。下端や刃口も傷みやすいが、油台にするとこうした刃口埋めが難しくなると思う。

右が寸六、あとの2台は三木の横山さんの寸四より狭い小鉋。よく切れて使いやすい。そのぶん、下端や刃口も傷みやすいが、油台にするとこうした刃口埋めが難しくなると思う。

次に、台の乾燥・吸湿を防ぎ、反りとか歪みが少なくなる云々という口上があります。でも、適切に管理された枯れた台なら、季節の寒暖や乾湿の変化くらいで、そう動くものでもありません。上の方の画像の鉋(仕上げで使っている)などは、季節で身の抜き差しの固さに違いは出ますが、下端を削り直して調整しなくてはならないような歪みや反りなど、もう何年もほとんど出ていません(細い框などを削って下端や刃口が傷んで直すことは当然あります)。このあたりは、収めたテーブルなどの天板の変化とよく似た感じですが、ここではこれ以上触れません。ただし、これは私のように作業のほとんどが、屋内の決まった工房の中という条件の下の事になります。屋外や、先日の店舗作業のように空調の強くかかった厳しい条件では、また別かもしれません。この点は保留ですが、屋外作業も多い大工職で油台にしている人は、私の知る範囲ではいません。これは、無塗装の木地で仕上げるという事と関係しているようにも思いますが、それもまた別に書きます。

→ 鉋は油台にしないようが良い(2)