今年最後の仕事のひとつになる椅子です。和室の小さいが瀟洒なギャラリーのためのものです。そのギャラリーに飾られる絵は、駒井哲郎さんという版画家の作品です。私は不明にして存じあげなかったのですが、戦後の日本を代表する洋版画の大家ともいえる人です。
夏に横浜に住む高齢の叔母を訪ねました。ちょうど東京世田谷在住の人から仕事の問い合わせを頂いていました。家を新築するにあたって小さな和室のギャラリーを作ったそうですが、その部屋に合う椅子が欲しいという事でした。その新しいギャラリーの写真は、事前にメールで送っていただいていました。まだ、何も展示されていない状態の写真でした。打ち合わせは、そのギャラリーで依頼を頂いた奥様と向かいあってお話をさせていただきます。壁には、エッチングと思われる版画が何点か掛けられています。実は、お話をさせて頂いている間から、その絵がずっと気になっていました。素人が慰みに描いた絵ではない。しっかりと鍛錬を積んだ確かな技量を持った画家が精力と魂を込めた作品であることは凡庸な私の目でも分かりました。