新型コロナウイルス肺炎によりイタリアは医療崩壊に陥ってしまったと報道されています。恐ろしい事態ですが、振り返れば日本はもう随分前から介護崩壊といってよい事態になっています。介護施設への入所が3年待ちとか、老老介護、はての心中・殺人。それに毎日新聞によれば、ヤングケアラーと呼ばれる通学や仕事をしながら家族を介護している15~19歳の子ども
が、2017年現在で37,100人いると明らかにしました(「家族を介護する10代」全国に3万7100人 負担重く、学校生活や進路にも影響)。この問題はテレビでも取り上げられて見ていて暗澹たる気持ちにさせられました。迂闊にしてそうした事態に気がついていませんでした。そんな国にしてしまったことが子どもたちに本当に申し訳ない。われわれ大人は仕方ない。自分たちの責任でもあるんだから。
今回の新型コロナウイルス肺炎の特徴として、
- 高齢者が重篤に陥りやすい
- 入院期間が長くなる(平均して3週間とも)
- 家族であって面会は厳しく制限される(実質できない)
さらにいわゆるPCR検査を受ける条件として
- 37.5度以上の発熱が4日(高齢者の場合2日)続く 他
があげられています(いまだに!)。その後検査結果で陽性となって始めて入院治療が行われる。この間最短で2日。
こうした状況を見て家族や親族の介護・看病・看取りを経験した人なら、治癒し退院できた場合でもその後のことを容易に想像できるでしょう。これから大量のコロナ肺炎介護棄民ともいえる高齢者が、市中に放り出されます。
高齢者というのは、一見元気で健康に見えても、非常に脆く危ういバランスの上にその状態は保たれています。たとえば転倒骨折、病気入院でそのバランスは一度に崩れとたんに認知症を発生したり、そのまま寝たきりになります。私の母親は父親の死後28日目の法事で低血糖で倒れそのまま1ヶ月の入院となりました。入院したその日からひどいせん妄状態となり、入院中は兄弟で交代で付き添いましたが認知症がさらに進みました。
上にあげた新型コロナウイルス肺炎の、37.5度の発熱2日以上・3週間の入院・家族他の面会不可・まして人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)の装着などはそのうちのひとつだけでも高齢者を壊してしまします。
もうひとつ私自身の経験をつけ加えます。私の父親は肺結核を患いその治癒後も長年の喫煙生活からCOPD(慢性閉塞性肺疾患)となり入退院を繰り返した後寝たきり状態となりました。入院した病院は急性期病院で寝たきり状態であっても症状固定
という事で90日での退院を迫られました。もうひとり認知症のかなり進んだ母親がいたため、どこか入所できる介護施設を探しました。その際、問題とされたのは肺結核罹病者だということでした。多くの介護施設では、申し合わせたように結核罹病者は治癒(排菌をしなくなった)しても2年間は入所をお断りしているとして断られました。結局、開所予定のサ高住(サービス付き高齢者住宅)を申し込むかとしているうちに、入院していた病院で誤嚥性肺炎で死にました。その間約半年のことでした。
新型コロナウイルス肺炎を患いさいわいにして無事治癒したとしても、その高齢者の多くは多かれ少なかれ認知症・寝たきりに近い状況で病院から出されるでしょう。今の感染爆発・予想される医療崩壊のなかでは当然猶予など与えられません。そして当たり前のように在宅
に押し付けられます。たとえ介護施設に空きがあっても結核罹病者であった父親と同じように、あるいは今の状況からそれ以上に新型コロナウイルス肺炎罹病者に対しては厳しい差別が予想されます。
今、医療崩壊間近(すでに最中になりかけているか)の状況で先のことを言っても仕方ないかもしれません。しかし、私は自分自身の経験からたとえ治まったとしてもさらに対処を必要とする厳しい事態が待っていると直感して恐れています。そのことも覚悟しなければならないし、それに社会も向き合う必要があると思います。