映画・『ある精肉店のはなし』がまた上映されます。おすすめです!

前に紹介した映画・『ある精肉店のはなし いのちを食べて いのちは生きる』が、ゴールデンウイーク中に名古屋のシネマスコーレで再び上映されます。見逃された人はぜひどうぞ。5月3日〜9日16日、時間はいずれも12:00〜13:50です。私は、その前に上映される『夢は牛のお医者さん』も見たいので、もう一度見に行くつもりにしています。

この映画について、ブログに書いただけでなく何人かの人に話をしました。中には「そんな映画を見たら肉が食べられなくなる」とおっしゃる人もいました。しかし、どこかの動画で監督の纐纈はなぶさあやさんは、「見終わった人がお肉を食べたくなるような映画にしたい」とおっしゃっていました。それで、実際に「肉がたべたくなった」という感想をもらったそうです。私は、肉がたべたくなったとまでは言えませんが、肉をいただく時は、ゆっくりとちゃんと味わいたいと思いました。たんに肉だけでなく、食べると言うこと自体を考える良い機会になります。

これを書いているうちに、Eテレの「スーパープレゼンテーション」という番組でイギリス人のジェイミー・オリバーという料理人が、アメリカやイギリスの食事と肥満について、具体的な数字や映像を交えて語っていました。ある程度知っていたつもりでしたが、かなりショッキングな内容です。私がまわりで普段目にしている状況から、日本もそうなりつつあるように感じています。私達が口にするものが、どこから、どうした人たちの営みによってもたらされるのか、やはり機会を探してでも知っておくべきだと思いました。

『ある精肉店のはなし いのちを食べて いのちは生きる』はいい映画でした

土曜日に見たもう1本の映画は、『ある精肉店のはなし いのちを食べて いのちは生きる』でした。たいへんいい映画でした。

大阪の貝塚市にある精肉店の話で、ここでは牛の肥育から手がけています。自分の店にある牛舎で牛を飼い、近くにある屠場で自分たちで屠殺・解体した肉を精肉して小売しています。食肉産業というのは、なんとなく分業化されているように考えていたので、こうした小さな店で肥育から小売まで一貫して行っている所があるというのが驚きでした。映画では、まず「見学会」と言われていましたが、多くの人が見守る中での牛の屠殺・解体の場面で始まります。その後は、この精肉店を営む北出さん家族・親族の日常の仕事や生活を淡々と記録しています。店主の出張販売、牛の肥育を担当していた店主の弟さんが新たに始めた太鼓作り、夏の盆踊りや年末・年始の家族総出の働きぶり。店主の奥さんは、明るいお茶目な人で盆踊りの仮装ではかわいらしいワンピースに三つ編みのウィッグ、そこに赤いリボンを結んでもらってはしゃいでいます。

食肉や皮革を生業とすることに対する差別についても避けていません。店主はケモノの皮を剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖かい人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられという「水平社宣言」を読んだ時に、これはまさに自分たちのことだと思って、その後、部落解放運動に参加するようになったと、これもやはり淡々と語っています。映画の最後のほうで、息子さんの結婚式のシーンがありますが、相手の人は一般の人で、彼女との北出さん達の話の中で、やはり部落差別の事が語られています。

さて、このまま話は終わるのかと思っていましたが、この屠場が閉鎖されることになり、その最後の屠殺・解体が北出さんたちによって行われます。牛舎から牛が長らく肥育を担当していた弟さんに連れられて、村の路地を通って屠場に向かいます。屠場では、店主の北出さんやそのお姉さん、奥さんたちが粛然とした面持ちで待ち受けます。私も、居住まいを正して見なくてはいけないと、ちゃんと座りなおして背筋を伸ばして見ました。

ハンマーの一撃で牛を倒すのは、店主の北出さんの仕事です。北出さんは、穏やかで一家のまとめ役でもあります。しずかに精肉業の将来やその中で店の事を語っています。弟さんは、いかにも凝り性な雰囲気。皮を剥ぐ時に脚を持つのは、女性の仕事で、あと内蔵を洗い捌くのも女性が担当します。しっかり者という感じの明るいお姉さんやお茶目な奥さんが粛々と仕事を進めます。たくさんの人が、この映画のレビューで書かれていますが、私達の口にする肉は、こうしたごく当たり前の助けあって働く人たちによって提供されます。いのちを食べるとか、いのちをいただくとかは良く言葉としてはつかわれますが、それは本当はこういうことなんだと示してくれていると思いました。それを食肉産業を賤業しすることにより見てこなかったように思います。映画には一家の甥っ子さん、姪っ子さん達など、子供さんを含めてたくさんの人が登場します。皆さん、顔を隠したり、もちろんモザイクをいれたりしていません。カメラも隠し撮りではありません。監督の纐纈はなぶさあやさんは1年半、地元にアパートを借りて住んだそうです。このあたりどこかのインタビュー記事にありましたが、小川プロの影響というか製作思想がちゃんと受け継がれています。なにより屠殺・解体の作業だけでなく、一年を通した日常の生活もカメラの前に晒した北出さんたちは本当にエライなと思います。いわば身を持って食肉業やそれを生業にしてきたことへの誇りと、逆にそれを賤業視することの下らなさを教えてくれているように思います。

この映画を見ると、肉をいただく時の心持ちが変わります。食べること自体を考えるよいきっかけにもなると思います。名古屋駅前のシネマスコーレで2月21日まで上映しています。できれば、前に記事で紹介した『ファルージャ』も合わせて見て欲しいなと思います。

シネマスコーレ

シネマスコーレ

シネマスコーレ

『ある精肉店のはなし いのちを食べて いのちは生きる』

映画・『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』を見てきました

今日は、朝から名古屋に映画を見に行ってきました。タローと散歩に出る朝5時には、まだ霙でしたがやがて雪になるとの予報だったし、空は黒くて低いし・・・。あとそれと仕事が少し煮詰まり気味だったので、ちょうど見たかった映画と見るべきだと思っていた映画がかかっていたので出かけました。行ったのは名駅のシネマスコーレで、見てきたのは『ファルージャ』と、『ある精肉店のはなし』の2本。入れ替えですが、朝から続けての上映で、料金も割引で2,500円で見ることが出来ました。今日は、初日ということで、『ファルージャ』を撮った桑名出身の伊藤めぐみ監督の舞台挨拶がありました。それも思い立って出かけた理由のひとつでしたが、やはり今日行って良かったです。

『ファルージャ』は、10年前、アメリカ占領下のイラク・ファルージャで武装勢力により拉致され、自衛隊撤退要求の人質にされた3人の日本人の今の姿を追っています。あの3人に浴びせられたおぞましいバッシングからもう10年が経ったのかと思います。抑えきれない思いを持って海外の危険な地域に身を置いた自国民を救おうとしない政府、役人、政治家、それに便乗して拉致された若い人やその家族に説教をたれる評論家、コメンテーターとかいう無責任な人種、さらにそれに乗じて弱い立場に置かれた人間を罵倒することしか自分を表現できないようなネット中毒者ども。今、思い返しても、そのおぞましさに本当に体が震えてきます。特に、女性の高遠菜穂子さんとまだ10代であった今井紀明さんへのバッシングがひどかったように記憶してます。私は、あれ以来「自己責任」という言葉を使ったことはありません。

そのひどい迫害を受けたお二人が、取材に応じて、今の活動を紹介して当時のことも語ってくれるのですから、やはり見なくてはいけない。高遠さんは、初志を貫いて今もイラクへの支援活動を続けています。映像は、拉致されたファルージャでの先天性異常の子供たちへのケアなど地道できめ細かい活動を伝えています。一方で、ファルージャの医師が拉致の問題を持ちだして「ファルージャの人間は皆いい人間だ。拉致は外部から来た人間の仕業だ」とかいい加減な事を言ったのに対して、「残念ながら、彼らはファルージャの人間だった。話の内容が私も居たファルージャのことだった」と事実は事実として、誤魔化しません。

今井さんは、帰国後のバッシングの中で、地元で罵声を浴びせられたり殴られたこともあったそうです。それで、引きこもってしまった時期もあったそうですが、もうゼロから始めるしかないと思いブログで、メールアドレスを公表して、自分を批判する人間に実際に会って話をしたりもしたとのことでした。そうした経験を生かして、今は大阪で不登校の若者を支援するNPOを立ち上げて活動しています。

舞台挨拶をする伊藤めぐみ監督

舞台挨拶をする伊藤めぐみ監督

はじめに書いたように、今日は監督の舞台挨拶がありました。それもあってか会場はほぼ満席で補助椅子も出されていました。監督の伊藤めぐみさんは三重県桑名市出身の28才の女性です。10年前、高校生だった当時に遠いイラクでの戦争とそれに自衛隊を派兵することに納得がいかずデモに参加したそうです。当時、高遠さんの講演も聞いていました。戦争や高遠さんに対するバッシングにずっと納得のいかない気持ちを持ち続けていました。今は、テレビ局でADの仕事をしているそうですが、映像作品を作りたいと思った時に、やはりあの事件をと考えたそうです。

映画では、その伊藤さんが10年前にデモに際してアピールする姿も収められています。ハッキリ思い出せないのですが、あれは私も参加していた名古屋のデモだったのかなと思いました。あの頃は、自衛隊の海外派兵という小泉の暴挙が許せずに久しぶりにデモに何度か加わりました。当時の思いは、私のホームページに今も残しています。

戦争反対!派兵反対!選挙に行き、意志表示をしましょう!

この記事を選挙前の数日間、ホームページのトップに置いていました。そんなことくらいしかやれなかったのですがね。映画を見終わって、高遠さんも、今井さんも、そしてこの映画の監督の伊藤さんも、10年前に感じた疑問をずっと持ち続けて今も活動を続けています。本当に立派なことです。

『ある精肉店のはなし』も素敵な、ある面で画期的とも思えるいい映画です。これは記事をあらためます。

高遠菜穂子さんのお名前の表記が間違っていました。申し訳ありません。それとリンク先も間違っていたので、あらためて貼り直します。各映画のページで、予告編も見られます。(2月9日)


シネマスコーレ

『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』

『ある精肉店のはなし いのちを食べて いのちは生きる』