乾漆をやってみる 1

脱活乾漆というものをやっています。これはある型に糊漆を使って麻布などを貼り重ねていき、固まったところでその型を抜くという技法です。古くから仏像などもこの技法で作られています。人に聞いたり、ネットで情報集めたり、でも基本は我流になります。

今は、普通に小さな器などは発泡スチロールなどで型を作って、固まればそれを壊して抜くというやり方が多いようです。型を作るのも抜くのも簡単で、コストも手間も省けるという意味では合理的で、鋳物の木型も今はそうして作られているようです。でも、木工屋としては、どうも納得しかねるところもあるので、木で型を作ってみました。昨年末に下請け仕事で使ったメルクシパインの集成材の端材がたくさんあるので、それを使います。材は密だし柔らかく彫りやすいのではと思ったのですが、意外に粘っこく刃物のかかりが悪くやりにくかったです。

その型に、続飯(そくい・米粉を練った糊)でまず和紙を貼ります。後で漆が固まった時に水に浸して型を抜くためですが、漆屋はじめ何人かは抜けないのじゃないかとの事でしたが、まあやってみます。

木の型に続飯で和紙を貼る

木の型に続飯で和紙を貼る

その和紙の上から、麻布に糊漆をヘラで練りこんだものを貼っていきます。シワや糊溜り、空気の層が出来ないように手で抑えつけるように型になじませ、ヘリで折り返すようにします。貼っているうちに糊漆の粘度が高くなるので特にタッカーなど打たなくても止まります。逆にこの季節、糊漆の乾燥が速く素早く行う必要があります。乾くのを待って、同様に貼り重ねていきます。下の写真は麻布3枚目を貼り終わった状態です。1日2回でもやれそうですが、あわてないことにします。

糊漆で麻布を貼り重ねる

糊漆で麻布を貼り重ねる

色漆を使ってみた

漆定盤を使った試作というか遊びが一応形になりました。

布着せも色漆も初めての試みだったのですが、このように木口の処理に使うことで、仕事の可能性が広がりそうです。次は、乾漆のまねごとをやります。

拭漆の器の木口に布着せをして色漆

拭漆の器の木口に布着せをして色漆

漆定盤使っています

先日作った漆定盤(→「山に樹を見に行く3 ミズメ」)、さっそく使っています。素材はここで紹介したナラの刳り物です。

米粉を炊いて練った続飯(そくい)に生漆を混ぜて糊漆を作る

糊漆を作る

糊漆を作る

糊漆で木口に寒冷紗を貼る(布着せ)

布着せ

布着せ

漆錆を付ける(錆付け)

錆付け

錆付け

これを研いで生漆で固める(錆固め)

錆固め

錆固め

色漆(黒)を塗ってみた。下地の荒れがモロに出るのは、ウレタンなどと一緒だと納得。写真が悪くよく分からず申し訳ありません。

色漆を塗ってみた

色漆を塗ってみた

 

欅の拭漆の納品

今日は、津市のお客様から依頼の欅の床板に拭漆を施した物を納品。もともとウレタン塗装がされていたのを矧がしての拭漆であった。さすがにウレタンの表面強度、浸透力は強く塗装をはがすのに苦労した。最後は残るウレタンは吸い込み防止の下地塗装と割り切る。依頼を受けて一年余、早くに終わっていたのだが納品のタイミングを逸して今日になった。お手持ちの家具調こたつ風の座卓の天板としてそのままお使いになる。一部木端の部分の傷を補修したがたいへん木味のよい板だ。お詫びの意味もあって口頭の見積額の八掛けの納品伝表を持って行ったが、その口頭の見積もり金額を覚えて下さっていていつでも良いと言ったのは私だからと満額を支払って頂く。最近仕事も見積もりもめっきり減っているので助かる。

拭漆欅床板


納品の日(だけ)はエビスビールと決めている。あてはさっと作った鶏レバー甘辛煮。昨日返品交換で届いたばかりの読谷山焼の器に盛る。

ヱビスビールと鶏レバー甘辛煮のあて