鎬鑿の柄をすげ替える

年末に終い天神で買った鎬鑿は、裏を作りなおして刃は研いだが、やはりこのままでは使えない。いかにも職人が自分ですげたという感のある柄で、出来ればそのままにしておきたいが、芯が出ておらず、このまま叩いて使うには精度も出ないし能率も悪い。第一、危ない。それで、柄をすげ直す。どうも穂の形から、もともとは突き鑿だったと思われるが、なんらかの必要があって急ごしらえで叩きに改造したのかもしれない。

市販の柄を使うが、手打ち風の趣のある口金はそのまま流用する。カツラも使いたかったが、こちらは穂や柄に対して径が細過ぎる。

柄をはずした古い鎬鑿の穂

柄をはずした古い鎬鑿の穂

古道具の鎬鑿の込み。錆がひどい。

込みの部分。錆がひどい。

込みは、画像のようにずい分錆が出ている。かなり古いものだと分かる。これにヤスリをかけて、その大きさに合わせて柄に穴をあける。並行して口金に合わせて柄を削りだす。込みや口金の内側に油を塗って当りを見ながら慎重に行う。それに肝心の芯を外してはいけない。下の画像のようなものになった。なかなかに良い風情だが、カツラを下げるためにクリの板に打ち込んで、わずかに耳を欠けさせてしまった。この点についてはまた記事をあらためる。

柄をすげ替えた古い鎬鑿。端正なよい姿をしている。

柄をすげ替えた古い鎬鑿。端正なよい姿をしている。やはり、こうした道具の全体を絵にするには50ミリでは、遠近感が不自然になる。 RICOH GXR A12 50mm macro


全く関係ないが、雪の中仕事場に向かう途中堤防の縁の寒椿。このカメラとレンズユニットは、デタラメにシャッターを押しても何となく絵にしてくれる。

RICOH GXR A12 28mm

RICOH GXR A12 28mm

宮本さん考案の手押し鉋ブレード研ぎジグを作ってみた

月内に、テーブルを15台収めなくてはなりません。色々あって、手持ちのナラを使う事にしました。それだけでは足らないので、柾目のナラを1立米ほど手配したのですが、これが硬い。今さら返品して手配し直すわけにもいかず使うしかない。年末のドタバタで、現品を確認せずにいた自分が悪い。手押し鉋をかけていると、すぐに切れ止んで、定盤の上でバタついてきます。交換してもすぐ切れ止むだろうし、研ぎに出したりすると、手待ちになってしまいます。宮本良平さん考案の、手押し鉋刃(ブレード)の研ぎ用のジグが大変優れもので役に立つと、木の仕事展IN東海2015の出展者の一人から聞いていたので、試してみた。

宮本良平さん考案の手押し鉋ブレード研磨ジグ

宮本良平さん考案の手押し鉋ブレード研磨ジグ。手前のものは、ジョインター用の押さえのつもりだったが、こちらは簡単にはいかない・・・

ほとんど、宮本さん製作のもののままだが、確かに便利です。記事の中で、宮本さんは勘所として2枚の刃先を平行にする事をあげていましたが、私の場合、2枚の刃の高さがほとんど同じに揃えられていて楽でした。(旧式の2枚刃鉋です。)単純に置くだけです。ジグの刃を寝かす部分の角度をキチンと合わせることで、グラインダーで中をすくように荒研ぎされた2枚の刃の、刃先と鎬の4本の線が、ひとつの平面に平行に並ぶ事になります。これを、画像のようにアラカンサス砥石で、縦横と慎重に研ぐことで上目摺り的に刃先を整える事が出来ます。宮本さんは、ダイヤモンド砥石を使うと書かれていますが、私の持っているダイヤモンド砥石は、平面が出ていないので、こうした用途では使えません。それでも、一組の刃物で3回ほどは、実用上差支えのない程度には研げそうです。

油砥石で研ぐ。この後、縦に研ぎ、さらに裏を整える。

油砥石で研ぐ。この後、縦に研ぎ、さらに裏を整える。

ちなみに、このジグの台の部分は、この今仕事で使っているナラの端材を利用しているのですが、木ねじ用の下穴を開けるキリが、途中で折れてしまいました。10年ほど前に、ブビンガでやって以来の事です。もちろん、こんな材にコースレッドという商品名の柔いタッピングネジは通用しません。5.1ミリの木ねじを慎重に下穴を開けて止めてあります。そういえば、ブビンガの加工では、12ミリシャンクのルータービットがねじ切れたし、9ミリとか12ミリの角のみのキリも何本か折りました。あれは、木材加工の感覚からはずれていたと思います。

折れた5ミリの下穴キリ。「石ナラ」とはよく言ったものです。

折れた5ミリの下穴キリ。「石ナラ」とはよく言ったものです。

古道具の鎬鑿しのぎのみを買った ー 終い天神2015

年末の25日は、京都に納品でした。お施主さんのお住まいは、千本釈迦堂や北野天満宮にほど近い西陣にあります。こちらからお願いして25日を指定しました。いわゆる終い天神の市の日です。車をお宅に置かせてもらって、短い時間ですが覗いてきました。

結局買ったものは、中古の鑿1本だけです。800円と言われて、500円に値切って買いました。鎬鑿(しのぎのみ)と言われるものです。画像のような状態のものでしたが、きちんと研ぎ直して、柄をすげ替えるなど手を入れれば良い姿の道具になる。そうした素性の良さのようなものを感じました。良く切れる使いやすい道具というものは、美しい姿をしているものです。例外はありません。8分(24ミリ)の鎬鑿は持っていないし、鋼の小刃の部分が薄いのも良い。

終い天神で買った鎬鑿(全体)

終い天神で買った鎬鑿(全体)。タブレットで撮影

刃先。幸いグラインダーは当てられていないようだ。

刃先。幸いグラインダーは当てられていないようだ。

羽裏。ダレて入るが、表から叩いて裏出しをやり直す。「クサレ」といわれる鋼を貫通する錆はないようだ。

刃裏。ダレて入るが、表から叩いて裏出しをやり直す。「クサレ」といわれる鋼を貫通する錆はないようだ。


こういうものを手に入れると、とにもかくにも玩びたくなります。睡眠時間2時間のときもあったこの年末でも、やってしまいました。時々、仕事が好きなのか仕事の道具を弄るのが好きなのか、他人から揶揄される時もあるし、自分でもそんなふうに考える事もあります。でも、以前にも書いたとおり(砥石の話・まとめ)、私の場合、こうして道具を弄る事が、とりもなおさず仕事を続けていく大きな動機付けになっています。

さて、研ぎあげてみると画像のように凛とした美しい姿になりました。テキ屋かそこにたどり着くまでの過程か、多分錆を落とすために、かなり乱暴にペーパーが当てられています。こうした古道具では、ありがちですが、そのため鎬の稜線がダレてしまっています。それでも、元のキリッとしまった形は保たれているように思います。実際に使ってみましたが、よく切れます。それに、ハシカイ感じもない。幸いなことに、乱暴にグラインダーなどは当てられていなかったようです。こうした古道具、特に鑿とか小刀の類は、炭素鋼が使われている場合が多く、下手にグラインダーなど当てられると、焼きが戻って全く切れなくなっていたり、逆に焼きが入りすぎてハシカくなりすぎて、刃こぼれを起こしやすく、これも使い物になりません。

ちなみに、下の1枚は、オリンパスのマイクロフォーサーズ規格のM.ZUIKO 45mm F1.8 というレンズで撮っていますが、こうした道具を撮るには、パースペクティブ(遠近感)の関係では、こうした90ミリ相当のものが自然に見えるようです。ただし、このレンズは寄れません。その下の3枚のような接写は出来ません。

研ぎあげた鎬鑿(全体)

研ぎあげた鎬鑿(全体)
OLYMPUS M.ZUIKO 45mm F1.8 / PEN E-P5

研ぎあげた鎬鑿(刃先)

研ぎあげた鎬鑿(刃先)
RICOH GXR A12 50mm MACRO

研ぎあげた鎬鑿(羽裏)

裏は叩いて押し直した
RICOH GXR A12 50mm MACRO

もう1枚、刃先をマクロ的に撮ったものを貼っておきます。画像をクリックすると拡大画像(1200 x 797px)が表示されます。さらに縮小前のオリジナルサイズ(4288 x 2848px)の画像も置いておきます。これを見ると、仕上げ砥石をかけても残っている研ぎ筋もよく分かります。

刃先のマクロ画像 RICOH GXR A12 50mm MACRO

刃先のマクロ画像
RICOH GXR A12 50mm MACRO

2寸の鑿

2寸幅の鑿

2寸幅の鑿

この2寸の鑿を買ったのは、ずいぶんと前になる。ある仕事で必要で、でも自分で道具屋を物色する時間もなく、当時付き合っていた機械屋が、手道具も扱っているとの事で頼んで持ってきてもらった。プレミアの付くようなプランド銘のものではないが、一目、良さそうなものだったので、買った。値段は、それでも特殊な刃物になるので、安くはなかった。今なら、型落ちのミラーレスカメラのダブルレンズキットが買えるくらいの値段だった。以降、使用頻度は高くないが、重宝している。普通に良く切れる。昨年の『木の仕事展IN東海2014』のDMに、その写真を使った。

机の天板の端ばめ加工

机の天板の端ばめ加工

その用途は、画像のように導付の仕上げになる。よく研ぎあげてあれば、凛とした美しい切断面となる。これを例えば、1寸2分くらいの鑿で、2回に分けて削っても、慎重に行えば実用上は問題なく仕上がる。しかし、仕事として数をこなしていかなくてはならない場合、微妙な段差が出来たりする事もあり、面白くない。

ちなみに、2寸の鑿の場合、この場合のように1寸4分(42ミリ)の材の留加工が出来る事になる(42✕1.4=58.8)。框や、こうした端ばめ加工なら、実用上これで充分だと思う。

端ばめ加工

端ばめ加工

今なら、トリマーにジグを当ててむしり取って、角だけ鑿で修正と言うやり方がある、というかそれが主流かもしれない。しかし、私はそうして回転する機械の刃物で切断したり、むしり取ったりする工作が嫌いなのだ。もちろん、今やそれ(機械作業)なくしては仕事としての木工など成り立たないし、現に私も使ってる。ただ、それは木取りや大まかな木造りまでにして、仕上げに近づくほど刃物を使った手作業の割合を増やしたい。年を取るにつれて、その思いはますます強くなってきました。動力の木工機械や電動工具の音や、手や体に伝わる振動が、最近はいよいよ苦痛に感じるようになった。

それに、いくら機械の精度と調整がよくても、前も触れたように導突き鋸で挽いたり(剣留と導突鋸)、こうしてよく研ぎあげた鑿で削った切断面の方が綺麗だ。それに対する自己満足が、私がこの仕事を続ける動機付けになってきた。

針葉樹(杉)を削る鉋 2

前に紹介した針葉樹用の鉋ですが、快調です。画像の左側に見える杉材、春日でも霧島でもない目の粗いごく普通の地の天井材ですがシラタも含めてきれいに削れます。

この鉋はシラタも含めて杉が良く削れる。

この鉋はシラタも含めて杉が良く削れる。

炭素鋼か?

買ったいきさつから青紙と呼ばれる特殊鋼だと思って来ましたが、どうも研ぐ時のサクサクと鋼がおりていくような感覚から、白紙ないしはそれに類した炭素鋼のような気もします。この辺りのことは20年もやっていて、未だによく分かりません。それに杉などの軟材を削るのは昔ながらの炭素鋼が甘切れして良いという根拠も、実はよく分かりません。

大切れ刃のゆえ?

もうひとつ、最近の市販の半仕込みの鉋にありがちなのですが、大切れ刃(鋭角)に研いでありました。研ぎながら徐々に刃先を立てるようにしてきましたが、これまでほとんど実用してこなかったので、まだ25度かそれ以下くらいです。これが効いているのか、でも本当は仕込み勾配の方が効くと思うのですが、これもよくわかりません。

甘めの仕込みが効く?

台の仕込みが多少甘めです。これも関係あるのかな。甘めといっても、購入してからほとんど弄っていません。これまで散々失敗してきました。購入直後にかなり固めに仕込んだつもりでも、何度か研ぎを繰り返して台と刃が馴染んでくる半年か一年後には緩んできます。それで台の表馴染みにハガキなどを貼るはめになります。それに懲りて、この鉋は刃口から刃が全く出ないような状態で、ひどい当たりの部分だけを慎重に擦るようにして徐々に馴染ませてきました。それでも結局は甘めの仕込みになってしまうのです。この甘めの仕込みというのが、台にストレスがかからず切削時にも柔らかく刃を保持して、軟材を削るのに都合が良いとか屁理屈をつける事も出来そうですが、これも具体的な根拠を示せと言われると困ります。


まあ、結果オーライでいいのですが、とりあえず杉を削れる鉋が手元にあるということで、使う材料、したがって仕事自体の幅が広がって嬉しくなります。展示会前からの継続で、手持ちの針葉樹を持ちだしては色々構想を練ったりしています。

針葉樹を削る鉋

補修の仕事も終り、仕掛の仕事を再開します。前に紹介したヒノキの薄板は、鉋で全体をめくってみると画像のような状態でした。ヤケが部分的に進んでいるのか、まだらになっています。それに木目がどうも私の好みではありません。制作意欲がかなり減退しました。

長らく放置されていたことによる焼けムラか?

長らく放置されていたことによる焼けムラか?

それではと、あらためて他の針葉樹の薄板を取り出して見ました。

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左は、解体された大阪の民家(昭和初期築)の扉に使われていたもの。今でもかすかに脂っぽい。屋久杉か?右は、ある地元の材木屋の処分品。中杢の上品な良い板。

これも材木屋の処分品の杉。幅が800ミリほどあるあ。

これも材木屋の処分品の杉。幅が800ミリほどあるあ。

計画変更というか、また新規に比較的大人しめの杉板を使って別のものを作ってみようかと思っています。


7年前に買った鉋。今井鉋製作所の「雪梅」

7年前に買った鉋。今井鉋製作所の「雪梅」

ところで、こうした針葉樹を削るのに画像の鉋がよく切れます。実は、この鉋は私の持っている鉋で一番新しく買ったものです。それでも、既に7年ほど前になります。三木の刃物市のあるイベントを見学している時に、たまたま隣り合った酔っぱらいのオヤジさんが、実は鉋鍛冶でした。それで、当然のように鉋の話になり、三木の他の鍛冶の鉋を愛用していると言うと、それならオレの鉋も使ってみろとなって、成り行きでその場で発注してしまいました。思い出したのですが、その時は普段の仕事に使う広葉樹用の鉋はもう間に合っているので、新規に打ってくれるのなら針葉樹用に「白」(白紙という炭素鋼)でお願いしたいと言いました。その鍛冶の爺さんは、オレは青が得意だから青にしてくれと言う事で、任せることにしました。

柔らかい地金で、普通によくきれる。名前を刻印されたは、余分。

柔らかい地金で、普通によくきれる。名前を刻印されたは、余分。

暫くして送ってきたのが画像の鉋です。カタログにもあるもので、体よく在庫処分をされたかと思ったりしましたが、あえて詮索はしないことにしました。頼みもしないのに、鉋の銘の裏に私の苗字が刻印されているのも余分なことで、私はこうした事が嫌いなのです。ただ、この鉋は、良い台にすげられていて、普通に研ぎやすくよく切れました。若干、刃持ちが悪いのは使い始めは仕方ないと言われています。でも、特にこれまで使い慣れたいくつかの鉋に代わるか、そのうちに入れるかという程でもない。それで、ほとんど使わずにいました。

最近、針葉樹の板を色々取り出して削ったりしていますが、ふとこの鉋の購入のいきさつを思い出しました。それで、試しにと使って見ました。普通に杉が削れます。杉のように一般に柔らかいと言われている材など削れて当たり前と思われるかもしれませんが、杉と地松、特に脂の多い肥松と言われる材は扱いにくいやっかいな材料になるのです。杉などは、広葉樹では普通に薄い屑が出て、そこそこきれいな削り面が作れるような鉋でも、粉しか出ない場合が多いのです。それで、少し刃を出し気味にすると、今度はむしり取るような厚い屑が出てしまう。

もう少し、ちゃんと鉋自体の調子を追い込んでから、また報告します。

終い弘法で買ったもの2014 その1 鉋身3枚

弘法さんに例年出展している砥石屋。砥石の売買もおかしな事になっていますが、そこそこ良心的価格設定。

弘法さんに出展している砥石屋。砥石の売買もおかしな事になっていますが、ここはそこそこ良心的価格設定。

鉋身3枚

大宮通り沿いの入り口から入ってすぐの謂わば一等地に今年も出展していた砥石屋で買いました。もう道具は買わないと決めているのですが、冷やかしのつもりで覗いたこの砥石屋で目に入ってしまいました。鰹節削りを頼まれている事もあって、こうしたチビた薄い、出来たら頭の四角い鉋があればと思ってはいました。それにこうした屋外で見るとありがちなのですが、これらはせいぜいがいわゆる寸四くらいの小鉋だと思っていました。値段以外に書いてあるものは、こうした露店でのつねで無視。

終い弘法で買った鉋身3枚。いずれも地金が柔らかく鋼が薄く使いやすそうだ。しかもちゃんと使われている

終い弘法で買った鉋身3枚。いずれも地金が柔らかく鋼が薄く使いやすそうだ。しかもちゃんと使われている

一目、地金は柔らかそうで細身な作りの私の好きな形だし、それなりにちゃんと使われ研ぎ減ったもの、つまりは良く切れて使いやすいものだったという事だ。それにヤクザなテキ屋の手によってグラインダーなどかけられていないのも良い。古い炭素鋼の場合顕著だと思いますが、その時点で刃物としては終わってしまいます。肝心の裏にも錆が出ていますが、「クサレ」といわれる鋼を貫通しているような錆傷はないようです。と言う事で、3枚を選んで合わせて3,000円で購入。あ、関西では常識ですが、こういう所で言い値で買うのはアホですから注意して下さい。

実際に持ってかえって見ると、店頭での印象より大きい。札に2寸半とあるのは鉋幅の実寸法で、鉋の呼称としては二寸となる(この辺りのことは鋸身の呼称と同じでややこしいのだが、ここでは触れません)。同じく2寸のシールのものは、実際には寸六のそれになる。

裏を押し直す

こうした露店に並んだ中古鉋の場合、裏は押し直すというより作ると考えたほうがよいでしょう。特に、こうしたチビたものはかなりの覚悟が必要です。慎重に、叩いては押しを繰り返し、じっくり裏(隙)を作ってきます。しかし、二寸の鉋の四角い形のものを、鋼に玄能を当てて割ってしまいました。気を取り直してなんとか他の2枚の裏を作りました。まだ完全とは言えませんが、とりあえずこんなものでしょう。

裏を作った二寸の鉋。「別誂」、「請合」とはあるが銘は読みづらい。

裏を作った二寸の鉋。「別誂」、「請合」とはあるが銘は読みづらい。

昔よく見た「土牛」、「鉄山人」「井本」の刻印。よく切れ使いやす出来る職人の普段使いの良い鉋だったようだ。

昔よく見た「土牛」、「鉄山人」「井本」の刻印。よく切れ使いやすい出来る職人の普段使いの鉋だったようだ。

 

表の研ぎ直しと片減りの修正

あと、やはり片減りしています。前に砥石の話というホームページ中の記事でも書きましたが、どうしても利き腕の側に力がはいるのか、研いでいくうちに、そちら側が減っていきます。この二寸の鉋の場合、裏から見て右側が、寸六の場合は逆に左側が減っています(左利きの職人が使っていたのでしょうか?)。これを、砥石の話 研ぎの実際2でも書いたように残っている側にグッと力を込めて研いで修正しています。加えて、大切れ刃といって刃先が鋭角になりすぎています。それを本格的に修正するには残された鋼が少なすぎます。刃先に力を入れて研ぎ、すこしづつ立てていきますが、とりあえずは針葉樹の仕上げ専用と割りきるしかありません。別の機会に触れたいと思いますが、大工の中にはこうして大切れ刃に一旦研いでから、刃先のみ仕上げ砥石で二段研ぎして杉を削る人もいます。

それと、裏を押すために叩くと、どうしても刃先線自体も歪んできます。そのためこうした大掛かりな裏の押し直しと、刃先の片減りなどの修正も含めた研ぎ直しは、交互に少しずつ進めていく必要があります。

片減りしていた向かって右側の端近くがまだ研げていない。

二寸の表側。片減りしていた向かって右側の端近くがまだ研げていない。

寸六の表側。裏だしのため叩いた痕がまだ残る。こちらは片減り修正で、左側にまだ砥石が当たっていない。

寸六の表側。裏だしのため叩いた痕がまだ残る。こちらは片減り修正で、左側にまだ砥石が当たっていない。

こうして一応裏も表も研ぎ直しました。しかし当初の目論見のように、鰹節削りに使うには大きすぎます。無駄に鉋身が大きいと重たいだけで、研ぎにくいし良いことはありません。それでは、普段使いの鉋にするには、寸六はもう鋼がもたないし、二寸の鉋は、不思議なもので寸八の鉋に比べて研ぎも台の調整も格段に難しくなります。それに、どちらも台に据えるにしても鉋身が短くなりすぎて市販されている荒台だと台の厚みに鉋が隠れてしまい使い勝手が悪い。鉋身が短くなって台との接触面が小さくなると仕込みを余程ちゃんとやらないと硬い広葉樹を削る場合、鉋身がビビったり、次第に台から刃が出すぎるようになります。でも、鉋自体は、良く切れそうです。仕上げ専用として短めの薄い台を自分で一から彫ってちゃんと仕込めたら、薄くて使いやすい粋な鉋になりそうです。

中古鉋に手を出して、とりあえずまともに使えるようにするには、事ほど左様に手がかるものなのです。安く手に入るからといって、素人は手を出さないほうが無難です。こうして手をかけて使える状態にする、そして使う、その事自体ににやけた満足感を持つことができないなら、やってられない世界だと思います。

仕事柄、鰹節は鉋で削る

今日は(日付では昨日になってしまったぞ)日曜日だけど、思う所あって昼から少し仕事をした。その分、まあいいかと思って夜更しをしてお酒を頂く。指から二の腕にかけて痒くなる。そうか、漆を触っていたのだと気がつく。あてはほうれん草のおひたし。先日雨中の花見の弁当に持って行った時に、醤油を忘れて削り節だけで食べた。ほうれん草も鰹もそれぞれの味があらためて良くわかったように感じておいしい。これまでちゃんと味わっていなかったのだと思って、以降は何もかけずに頂いている。

おちょこは、天目茶碗(再現品)ということらしい。やはり頂きもの。

能古見もこれで終わり

能古見もこれで終わり。すいません、食べ散らかしを酔っぱらいの絵です。