針葉樹(杉)を削る鉋 2

前に紹介した針葉樹用の鉋ですが、快調です。画像の左側に見える杉材、春日でも霧島でもない目の粗いごく普通の地の天井材ですがシラタも含めてきれいに削れます。

この鉋はシラタも含めて杉が良く削れる。

この鉋はシラタも含めて杉が良く削れる。

炭素鋼か?

買ったいきさつから青紙と呼ばれる特殊鋼だと思って来ましたが、どうも研ぐ時のサクサクと鋼がおりていくような感覚から、白紙ないしはそれに類した炭素鋼のような気もします。この辺りのことは20年もやっていて、未だによく分かりません。それに杉などの軟材を削るのは昔ながらの炭素鋼が甘切れして良いという根拠も、実はよく分かりません。

大切れ刃のゆえ?

もうひとつ、最近の市販の半仕込みの鉋にありがちなのですが、大切れ刃(鋭角)に研いでありました。研ぎながら徐々に刃先を立てるようにしてきましたが、これまでほとんど実用してこなかったので、まだ25度かそれ以下くらいです。これが効いているのか、でも本当は仕込み勾配の方が効くと思うのですが、これもよくわかりません。

甘めの仕込みが効く?

台の仕込みが多少甘めです。これも関係あるのかな。甘めといっても、購入してからほとんど弄っていません。これまで散々失敗してきました。購入直後にかなり固めに仕込んだつもりでも、何度か研ぎを繰り返して台と刃が馴染んでくる半年か一年後には緩んできます。それで台の表馴染みにハガキなどを貼るはめになります。それに懲りて、この鉋は刃口から刃が全く出ないような状態で、ひどい当たりの部分だけを慎重に擦るようにして徐々に馴染ませてきました。それでも結局は甘めの仕込みになってしまうのです。この甘めの仕込みというのが、台にストレスがかからず切削時にも柔らかく刃を保持して、軟材を削るのに都合が良いとか屁理屈をつける事も出来そうですが、これも具体的な根拠を示せと言われると困ります。


まあ、結果オーライでいいのですが、とりあえず杉を削れる鉋が手元にあるということで、使う材料、したがって仕事自体の幅が広がって嬉しくなります。展示会前からの継続で、手持ちの針葉樹を持ちだしては色々構想を練ったりしています。

ヒノキの薄板 2

結局、気を取り直してヒノキの薄板を使った収納棚を製作中。若干遅れそうですが、木のある暮らし展でお見せしたいと思います。そのヒノキの薄板を一見、端ばめ風・実は戸框で囲う(収縮を逃がす)構造の戸板とします。端ばめ框とでも名付けようかと思っています。先例はあるのでしょうか?

端ばめ框とでも名付けようか?

端ばめ框とでも名付けようか?

端ばめの留部分の裏側

端ばめの留部分の裏側

同じく裏から見る

同じく裏から見る

針葉樹を削る鉋

補修の仕事も終り、仕掛の仕事を再開します。前に紹介したヒノキの薄板は、鉋で全体をめくってみると画像のような状態でした。ヤケが部分的に進んでいるのか、まだらになっています。それに木目がどうも私の好みではありません。制作意欲がかなり減退しました。

長らく放置されていたことによる焼けムラか?

長らく放置されていたことによる焼けムラか?

それではと、あらためて他の針葉樹の薄板を取り出して見ました。

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左は、解体された大阪の民家(昭和初期築)の扉に使われていたもの。今でもかすかに脂っぽい。屋久杉か?右は、ある地元の材木屋の処分品。中杢の上品な良い板。

これも材木屋の処分品の杉。幅が800ミリほどあるあ。

これも材木屋の処分品の杉。幅が800ミリほどあるあ。

計画変更というか、また新規に比較的大人しめの杉板を使って別のものを作ってみようかと思っています。


7年前に買った鉋。今井鉋製作所の「雪梅」

7年前に買った鉋。今井鉋製作所の「雪梅」

ところで、こうした針葉樹を削るのに画像の鉋がよく切れます。実は、この鉋は私の持っている鉋で一番新しく買ったものです。それでも、既に7年ほど前になります。三木の刃物市のあるイベントを見学している時に、たまたま隣り合った酔っぱらいのオヤジさんが、実は鉋鍛冶でした。それで、当然のように鉋の話になり、三木の他の鍛冶の鉋を愛用していると言うと、それならオレの鉋も使ってみろとなって、成り行きでその場で発注してしまいました。思い出したのですが、その時は普段の仕事に使う広葉樹用の鉋はもう間に合っているので、新規に打ってくれるのなら針葉樹用に「白」(白紙という炭素鋼)でお願いしたいと言いました。その鍛冶の爺さんは、オレは青が得意だから青にしてくれと言う事で、任せることにしました。

柔らかい地金で、普通によくきれる。名前を刻印されたは、余分。

柔らかい地金で、普通によくきれる。名前を刻印されたは、余分。

暫くして送ってきたのが画像の鉋です。カタログにもあるもので、体よく在庫処分をされたかと思ったりしましたが、あえて詮索はしないことにしました。頼みもしないのに、鉋の銘の裏に私の苗字が刻印されているのも余分なことで、私はこうした事が嫌いなのです。ただ、この鉋は、良い台にすげられていて、普通に研ぎやすくよく切れました。若干、刃持ちが悪いのは使い始めは仕方ないと言われています。でも、特にこれまで使い慣れたいくつかの鉋に代わるか、そのうちに入れるかという程でもない。それで、ほとんど使わずにいました。

最近、針葉樹の板を色々取り出して削ったりしていますが、ふとこの鉋の購入のいきさつを思い出しました。それで、試しにと使って見ました。普通に杉が削れます。杉のように一般に柔らかいと言われている材など削れて当たり前と思われるかもしれませんが、杉と地松、特に脂の多い肥松と言われる材は扱いにくいやっかいな材料になるのです。杉などは、広葉樹では普通に薄い屑が出て、そこそこきれいな削り面が作れるような鉋でも、粉しか出ない場合が多いのです。それで、少し刃を出し気味にすると、今度はむしり取るような厚い屑が出てしまう。

もう少し、ちゃんと鉋自体の調子を追い込んでから、また報告します。

ヒノキの薄板

昨日、今日と材を引っ張り出しています。寸法を測り、鉋で木地を部分的に露出させ、色や木目を吟味して木取りを考えるという作業をを繰り返しています。展示会出展のための仕事のように厳密に大きさとか仕様が決まっていない場合は、材によって大きさとか仕口を変える場合もあります。もっと言うと、気に入った材を使う、それを活かすために何かを作る。そのために仕様や仕口自体を考えたりします。本末転倒とも言われるかもしれませんが、気に入った板を引っ張り出して眺めては、これを使ってあれを作ろう、これにしようと考え悩むのは、幸せな時間でもあります。

ヒノキの薄板。割れ、入皮などの傷を外して幅・2尺4寸、高さ・3尺ほどの無地の材が取れた

ヒノキの薄板。割れ、入皮などの傷を外して幅・2尺4寸、高さ・3尺ほどの無地の材が取れた

木を出していると、またヤモリがいました。今回も2匹一緒です。ただ前に見たものより明らかに小さいし色も薄い。まだ若いカップルのようです。よく知らないのですがヤモリというのは、こうしてツガイで冬を超すのでしょうか?それに重なった板の間の隙間というのは、居心地が良いのでしょうね。確かに、私だって冬越しに眠るなら、スレートの隙間やヒューム管の中よりは木の板の間を選びます。