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300B シングル・パワーアンプ

300B シングルアンプの斜め外観

もう二十年近く前の事ですが、当時真空管を弄び始めた私は、ある妙齢の女性に一つの真空管を見せて、これは何だと思うと尋ねました。たしか、昔の五球スーパーで使われた42か、6Z-P1という大きな出力管だったと思います。しばらくそれを眺めて考えた彼女の答えは、

便所の電球!

私は、その人の確かな観察眼と発想の素直さにいたく感心いたしました。以来、いくら真空管なるものに主観的な思い入れを膨らませようが、側から見れば便所の電球を弄ぶキモいオヤジの所業に過ぎぬと常に自覚しておこうと肝に命じました。もっとも、関西とりわけ大阪で生活していくには、年齢・性別に関わらずこの程度のウィットは必要とされます。

300B シングルアンプの側面外観 300B シングルアンプの上面外観

その便所の電球マニアの間で、銘球の誉れも高くひときわ霊験あらたかなる真空管があります。半世紀以上も昔、米国の電話屋・映画設備屋が作った300Bというものです。直熱三極管と言って増幅素子としてはもっとも原始的なものです。それこそ電球のフィラメントの廻りに格子状のグリッドを張り、それを電子を受けるプレートという板で囲っただけのものです。しかし、これについて書かれたものを読むと、このガラスのチューブの中のプレートの奥には、美しい音楽を奏でるアメノウズメノミコトの末裔がお隠れになっているかの如くです。なんでも、それまで聞こえなかった演奏者の息遣いやら、ホールの空気感やら、弦の松ヤニの飛び散る音や臭いまでするとなると、そう解釈するしかありません。きっと、某深夜放送の『空耳アワー』に投稿している人は、皆 300Bのアンプを使っているのでしょう。もっとも、グレン・グールドの鼻唄なら、パソコンに繋いだ千円のスピーカーからも聞こえてきますが・・・

アンプの配線の様子を裏蓋をはずして見る 市販品を塗装して使ったメータ

根性のねじ曲がった私は、こうした不可解な神話と法外とも言える価格のついたものは買わない・使わないと決めているのですが、後に述べるような理由で8年ほど前に組んでみたのがこのアンプです。

シャーシは、1.6T の鋼鈑を使ったものを知人の勤める板金屋で作ってもらいました。それに関して悲しい思い出が残ってしまったのですが、それについても後で書きたいと思います。便所の電球の女王様に対して失礼があってはならぬと、私にしては異例の立派で大きなタムラのトランスを使っています。これくらいの厚みの鋼鈑を使いきちんと溶接が施されていれば、強度的には十分です。

330B シングル パワーアンプ・シャーシ図面(70KB PING)

メータは、市販品では小型でカッコイイものが見当たりません。普及品のアクリルのカバーをマスキングしてシャーシと同じ色で塗装して使っています。

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回路

手書きの回路図を、画像ファイルとして置いておきます。Linuxでも使える回路図エディタはあるのですが、いまいち使いこなせません。

300B シングル・パワーアンプ回路図

使用真空管・トランス
V1 - NEC
V2 300B CETRON
V3 5U4G USSR
T1 F2007 タムラ
T2 A4004 タムラ
T3 PC3004 タムラ
直流電位
E1 123V
E2 83.8V
E3 1.82V
E4 360
E5 67.5〜72.5V
E6 417V
E7 426V
E8 430V

ベテランの方ならすぐお気づきだと思いますが、このアンプの構成は是枝重治という人が二十年ほど前にラジオ技術という雑誌に発表されたものに倣っています。いわばパクリなのですが、その構成の内容は以下のようなものです。

  1. 五極管ドライブ
  2. 出力管のフィラメントの直流点火
  3. 無帰還
  4. 大量のブリーダー電流による安定化
  5. 出力管のカソード電流監視のメーター

このうち、1と4は、本家ウエスタン・エレクトリックの91-Aと言うアンプがオリジナルですし、2と3は、直熱三極管シングルでアンプを構成する場合の常道のようになっています。

コンデンサ
C1 100M 16V
C2 0.033M 600V
C3 100M 100V
C4 100M 160V
C5 47M 450V
C6 47M 450V
C7 22M 500V
C8 10000M 16V
C9 0.1M 100V
C10 100M 16V
抵抗
R1 100K
R2 300 2W
R3 51K 3W
R4 250K
R5 51 3W
R6 51 3W
R7 900 10W
R8 100 3W
R9 56K 47K 3W
R10 20K 30W
R11 12K 10W
R12 150 3W

真空管の構成は、やはり高価なWE-310Aや、WE-274Bなどとても使えません。トランスもタムラのカタログ製品を使用しています。したがって、回路定数は違っています。

ドライバーを何にするかは、悩む価値がある所です。これだけ単純なアンプで、しかも無帰還となると、アンプの特性などほとんどドライバーとトランスで決ってしまいそうです。お金のある人は本家の91-Aにならって、WE-310A、お金のない人は6SJ7などのGT管と相場が決まっているようです。真空管を並べたバランスという点からは、そうした大きなST管、GT管を選んだ方が手っ取り早いでしょう。

結局、そうした方向とは正反対の小さなMT・7ピンの国産通信用の真空管を選びました。これは、たまたまある球屋で見つけて、その作りの良さに惹かれて買っておいたものです。定格や特性曲線をながめていたのですが、実際に使ってみてその優秀さに驚きました。後で、示しますがこのアンプが、思ったより低歪みで低雑音に仕上がったのは、優秀なタムラのトランスとこの球のおかげだと思っています。

市販品を塗装して使ったメータ

小さなMT・7ピンの球にしては、随分電流を流してムチャな使い方にも思えますが、これでも定格の半分以下です。特筆すべきは、マイクロフォニック・ノイズの極めて少ないことで、実働状態でシャーシや球自体を指で弾いても長く尾を引くようなひどいノイズは発生しません。このあたり、5881 UL-PP アンプで使った6RR8と大いに違う点です。もちろん、いわゆるオーディオ用の真空管ではありませんが、ちいさなガラス管いっぱいにカチッと嵌め込まれた、リブの入ったいかにも丈夫そうな円形のプレートを見ると、そうした堅牢な作りが効いている気がします。

私の知る限りこの球を使った製作例が雑誌などに掲載された例はありません。もっとも、ここ5〜6年『ラジオ技術』も『無線と実験』も立ち読みすらしていませんので不確かです。ただ、ネット・オークションで検索すると、たまにこの球も出品されています。値段も安く、入札すらされない場合もありますので、たぶん雑誌などの掲載例はないのでしょう。私は、必要以上のストックを持たないので、そうした状況を守るためにも、この球の名前は控えておきます。ベテランの方なら、すでにご存じでしょうし、画像でお分かりになるでしょう。

この種の国産・通信用の真空管は、宝の山のように思います。作りの良さは、おかしな外国ブランドの怪しげな球とは雲泥の差ですし、少しエイジングをすれば特性は見事にそろっています。オーディオ向けの動作例や、デッド・コピー用の雑誌の記事などがないだけの話です。定格表と特性図さえ見て、自分で簡単な動作実験をする労を厭わなければ、怪しげな外国ブランドのスタンプのついたものに、群がる必要はありません。雑誌のライターの人や、ベテランの方達は、意地悪ですから自分用にはこっそりこうしたものを利用しているのでしょう。

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配線・部品

出力トランス廻りの配線 出力管廻りの配線 電源トランス廻りの配線

部品については、特にこだわりはありません。部品や真空管の銘柄を変えたら、驚くほど音が良くなったとしたら、元の部品が不良品か、そのアンプが設計や実装に余程問題のある出来損ないだと思っています。信頼性という意味では、国産の部品が一番ではないかと感じています。パーツ屋で普通に売られている抵抗やコンデンサーでも、その値は気持の良いほどそろっています。1%クラスの金属被膜抵抗などはもちろんですが、5%クラスの酸化金属被膜抵抗とか、巻線抵抗でもたいていは1%以内の誤差の中におさまっており、選別の必要もありません。安価な黄色いSIZUKIブランドのコンデンサーも同様です。

配線に関しても、タムラとか旧タンゴといった日本のメーカーのトランスを使う限り、アースのポイントの取り方などで、雑音値が変ったことはありません。本当にありがたい事だと思います。しかも、こうした優秀な部品が大須や、日本橋、秋葉原に行けば、一日で揃うのですから、これ以上何を望むのかという感すらあります。 あるマニア向けの雑誌の座談で、日本にはトランスの技術がないなどという暴言が吐かれていました。ご自分は、タムラやタンゴの世話にならずに、原稿を書いたり商売をしたり出来るのでしょうか。このように、自分の民族を辱め、思考停止のマニアの下劣な射幸心を煽る事が飯の種になっているのは残念な事です。

配線や部品選びは、なんというか弁当箱の蓋を開けたときのようなワクワクするような気分になれるものと言う事を第一にしています。コンデンサーなども常識的な値段の範囲であれば、色や形で選んでいます。部分的にブランド品を使っているのはそのためです。今さら真空管アンプを組み立てるなど、どう考えても道楽にすぎないのだから、多少は無駄や遊びがあってもいいと思います。ソーセージを蛸にしようが、りんごをウサギにしようが、栄養価は変りませんが、頂く時の気分は全く違います。電気の事が良く分からない私には、こうした楽しみがあってこそのアンプ作りです。

単純な二段増幅のモノラル・アンプですが、電解コンデンサーをすべてシャーシ内に収めたこともあって、ゴチャゴチャしたものになってしまいました。フィラメントの整流用の三端子レギュレターは小さなヒートシンクを介してシャーシに固定してあります。その部分のシャーシ上面は、仕方なく放熱用の穴を開けてあります。

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測定結果

周波数特性

300B シングル・ パワーアンプの周波数特性 / 1KHz・1W基準
周波数 20 50 100 200 1K 5K 10k 15K 20K 50K 100K 150K
応答 -2.3 -0.5 -0.2 0.1 0 -0.1 -0.4 -0.8 -1.2 -4.8 -10 -18.4

300Bパワーアンプの周波数特性

100ヘルツ・方形波の出力波形 1キロヘルツ・方形波の出力波形 10キロヘルツ・方形波の出力波形

高域は 5KHz、低域は200Hzから減衰しています。低域に関しては、ドライバーと出力管の結合時定数を1.4msecと極端に少なくして、意識的に減衰させています。多少やりすぎの感もありますが、もともとこのアンプでは小さなフルレンジユニットを鳴らすつもりでしたから、余分な低音域はアンプの方であらかじめカットした方が良いと思いました。立派なトランスを使いながら、もったいない気もしますが、仕方なくそうなったのと、意図してやったのでは、気の持ち方が随分違うと感じます。私とは無縁の境地ですが、金持ち喧嘩せずとは、こういう事なんでしょうね。

カップリング・コンデンサーの容量を増やす・パラレルに追加する事である程度低域を伸ばす事は出来ます。ちなみに、0.22MFを並列に加えると、200Hzまでは、ほぼフラットで、20Hzで -1.4dBとなりました。高域とのバランスを考えてもこんなものかと思います。鯨やコウモリに音を聴かすためでなく、人間様が音楽を聴くためなら、周波数特性などこれで必要にして十分かもしれません。むしろ、半世紀前から本質的に進歩していないスピーカーシステムの現状を考えると、これくらいか、もっと狭帯域の方が良い場合もあるでしょう。三極管シングルが人気があるのも、そうした側面があるように思います。

右の画像は、上から順に、100Hz、1KHz、10KHzの方形波出力です。

歪率特性

300B シングル・パワーアンプの出力・周波数別の歪率 (%)
周波数 0.5W 1W 2W 4W 6W 7W 8W
100Hz 0.21 0.38 0.86 1.8 3.0 3.8 5.8
1KHz 0.22 0.37 0.77 1.7 2.8 3.6 5.3
10KHz 0.34 0.46 0.76 1.5 2.6 3.4 5.4

歪率に関しては、当初 1W出力時に 1%以内程度を念頭においていましたので、望外のデータです。ただ、やはり 1KHzより 100Hzや10Kzの数字が良い場合があるなどおかしな点もあります。校正もしていない測定器のネット上のデータとして眉に唾をつけてご覧下さい。

歪率・1%以内と言う範囲で、出力・2W。枯れ木も山の賑わいの最大出力で、8Wというところでしょう。

利得・入力感度

最終的な仕上がり利得は、28.3dB(26倍)で、最大出力を8Wとするとその時の入力は0.31V となります。感度が高すぎて、家庭内で使うにはかえって使いづらい気がします。

残留雑音

入力をショートしたときの残留雑音は、UA-1Sのメーターで、0.42mV を中心に小さく針が振れています。無帰還のアンプとしては立派な出来のような気がします。UA-1Sの出力をオシロでモニターすると、フィラメントのフィルターをもう少しまじめに作れば、さらに雑音は減るように思いますが、実用的にはこれで十分です。


以下、2011年10月10日追加

300Bシングル・モノラルパワーアンプの修理

木工するのに気持ちのよい季節というのは、そう長くない。今がちょうどその時期なのだが、こうした時に限ってのように事務的な作業に追われる。これから2件のいわゆる箱物の少し複雑な物件の図面を仕上げなくてはならない。今は、こうした作業もCADを使って行うので、またしてもパソコンに向かうことになる。そうした作業は夜にして、昼間は普通に仕事をすれば良いというのは無理だ、ずいぶん前にわかった。体も頭ももはや若くない。結局遅れ遅れになって、お客さんに叱られることになる。

加えて、これは仕事とはいえないのだが、以前作ってもう10年以上も使ってもらっている真空管アンプの修理依頼がきた。じつは私のホームページでも飛び抜けてアクセスが多いのが、仕事の関係ではなくこのアンプの制作記事(300Bシングル・パワーアンプ)なのだ。先日大阪に出向いた折に、現品を見せてもらった。確かに音が出ない。一応裏蓋を開けて配線のチェックくらいはしたが、テスターすらない状況では診断は無理なので、真空管だけ抜いて本体は送ってもらうことにした。手で持って帰るにはこのアンプはあまりに重たい。

ヤマト運輸の宅急便で届いたのが10月3日、仕事が忙しかったのでそのまま梱包もほどかずにいた。8日(土)になって、梱包を開く。裏蓋を開けようとすると、あきらかに凹んでいる。それに四隅の溶接の内2カ所にひどいクラックが入っている。フタを取ると、一番大きな電解コンデンサーのハンダが一カ所外れている。これは相応の高さから落としたとしか考えられない。念のために送り主に、もしかして発送前に落としたりしたかと尋ねると、そんなことはしてないという。先週私がチェックした時も無事であった。

クラックの入った300Bアンプのシャーシ1 クラックの入ったシャーシ(別角度)

ヤマトに一応連絡して、現状の確認と事故の調査をお願いする。まあ、丁重に対応してくれはしたが、到着後5日も経っているので調査も保証も難しいとの予想通りの返答ではあった。それにワレモノのシールは貼ってあったが、梱包がエアーキャップ(プチプチ)を巻いて、ガムテープでとめただけという仕事柄、信じがたいものであったので、あまり強くは出られないなとも思っていた。一番怖いのは、トランス類の断線やピッチの割れであったが、簡単な導通のチェックなど行うと、それは大丈夫そうであった。

気を取り直して落下による損傷のチェックも兼ねて修理に入る。

前に聞いていた症状によると、雑音が少しずつ目立ちはじめ、だんだん音量も小さくなり、とうとうまともに音が出なくなったとの事。 メーターでの300Bのカソード電流の値は60mAほどで正常値だから、初段周りが原因かと思って、交換の球をおくったが症状は改善せず云々。あらためてチェックすると同様の症状が再現する。300Bのカソード電流が正常に流れているということは、電源も含めた出力段まわりは正常だということなので、初段まわりが原因ということで問題はしぼりやすい。まずは常道に従い直流電位をチェックすると、初段のプレート電圧が異常に低い。これではまともに動作するはずがない。スクリーングリッドやカソードの電圧や、プレート負荷抵抗の前のデカップリングの電圧はほぼ正常値の範囲である。プレート抵抗が設計値よりずいぶん大きくなっていることになる。そこで、このアンプを実装したときに頭をよぎったためらいを思い出した。それについては後述する。

増大した抵抗値

このプレート抵抗の設計値は51KΩである。この抵抗を取り外して測定してみると230KΩもあった。この抵抗には通常の動作で約1.1Wの負荷がかかることになる。だから、回路図にはちゃんと3Wの抵抗と自分で指定してある。そこに2Wの金属被膜抵抗を使っているのだ。いまならちゃんと5Wクラスの酸金(酸化金属被膜抵抗)を使うところだが、当時はプレート抵抗のような信号負荷となる所に音の悪い酸金抵抗など使うことに抵抗があったのだ。それで、2倍のマージンもとれないがカーボン抵抗と違って金属被膜抵抗は丈夫だと聞くし、リード線も太く放熱もよさそうだしと、勝手に理屈をつけて、これを着けたのだ。その時、やはり多少はためらいがあったために、今実際に故障が生じて、その事を思い出した。逆によく10年も持ったものだという気がする。ついに焼き付いて、急激に抵抗値が増加してしまったのだろう。

この抵抗を手持ちの3Wの酸金抵抗に交換する。落下の際はずれたであろう電解コンデンサーを付け直す。それと少し気になる事のあった出力段のカソードバイパスコンデンサーをついでに交換する。嘘のように正常な直流電位に戻る。もう発振機やオシロスコープを持ち出すのも面倒なので、遊んでいるロクハンのユニットをつないで裸で鳴らしてみる。パソコンに吸い出したモノラル録音の森山良子が若い声できれいに歌う。それが心地良い。念のため一晩通電させてから、あらためて直流電位だけチェックして音出ししても大丈夫であった。このアンプは今手もとに2台残っているのだが、肝心の出力菅をお金がないときにネットオークションで売り払ってしまい音を出せる状態ではない。このアンプを設計して作った20年近く前には考えられなかったように老眼が進み、体力も落ちた。測ってはいないが聴力だって相応に落ちて、若者なら聞こえる高周波なんてとっくに聞こえないはずだぜ。そうした老人の耳には、今あらためて聞くこのナローレンジの直熱3極管無帰還のアンプの音が優しいのかなと思う。中国製でもロシア製でもなんでも良いから、300Bをもう一度揃えてまた鳴らしてみようと思った。

交換したパーツ

自分で作った物だが、これはいいアンプだと思った。それは、よくネットで見かける音がいいとか言う読まされる方が恥ずかしいような自画自賛ではない。10年使い続けて、私の部品実装の間違いで生じた故障以外は、球も含めて極めて正常に動作している事、シャーシにかなりのダメージを受けるような強い落下事故にもかかわらず基本部品に障害がない事、今回のような不具合が生じても回路も部品配置も単純で、チェックや部品交換が容易な事、などと言うことだ。ちなみに身の回りの電化製品、とくにオーディオとかビジュアルと称するジャンルの物で10年以上不満なく使えているものがどれだけあるだろう。そうした意味でもいいものであったと言うことは出来ると思う。ちなみに、このアンプは20年近く前では、特注のシャーシも含めて部品代だけで10万円ほどで揃えられた。その実費だけ頂いて何台か作って使ってもらっているのだが、タムラのトランスもずいぶん値段が上がって、今なら倍の価格でも部品を揃えるのは難しいと思う。


全くなんの保証もしませんし、責任も取りませんが、作ってみる価値はあるとかなと思います。個人でお使いになるなら、回路や配線、シャーシ図面もコピーしてもらってけっこうです。ただし、まったくの道楽でやっていることなので、質問の受付やアドバイスを行うつもりもありません。もとの記事で特定を避けた初段の管種ですが、ウエスタンの91B型アンプの構成の流れをくむもので、あとは回路図をよくご覧になれば分かると思います。3極管シングル・無帰還という構成なら、よほどデタラメな配線や部品配置でもしない限り、オシロや発振器といった基本的な測定機を持たなくても、テスターだけで音は出ると思います。ただし、相応に高圧電流も流れますし、発熱もあります。音が悪くなるとか言った迷信でヒューズを省いたりするのは危険です。配線に音が良いというこれまた迷信のことさら太い線材は使わない方が無難です。配線は、細めのスズメッキの専用の配線材を使いましょう。見た目も綺麗だし、ハンダ付け不良によるガサゴソといった嫌な雑音を発生させる可能性が少ないという意味では音も良いはずです。配線材はスズメッキの上から軽く熱してハンダを染みこませます。その上で部品のリード線も同じですが、ラグ端子に一回だけからげた上でハンダを流せば、私のようにハンダ付けが下手くそでも失敗は少ないと思います。素人の私が、同じく素人の皆さんにアドバイスが出来るとしたら、それくらいです。繰り返しになりますが、万が一の事故や怪我に関しては一切の責任はとりません。

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