以前作った7C5シングル・パワーアンプが、人手にわたってしまった事もあってまた作ろうと思いました。 本当は動機は他にも色々あるのですが、それはまた別の機会にします。半年近く更新を滞らせていたサイトの久しぶりの記事に真空管アンプの製作記を書いた事に何かご推測ください。
出力トランス タムラ・F475の三次巻線から出力管のカソードに、二次巻線から初段のカソードに合わせて9.4dBのNFBをかけています。
製作にあたって、百瀬了介先生の「 6V6シングル・ステレオ・パワーアンプの製作」(『ラジオ技術』1993年12月号)を参考にさせて頂きました。
7C5シングルパワーアンプ 回路図( PNGファイル・画像ファイル)
7C5シングルパワーアンプ 回路図( CE3ファイル・水魚堂回路図エディタファイル)
回路図作成にあたっては、水魚堂さんの回路図エディタを、真空管などの部品はラジオ・シャックさんのライブラリを使わせて頂いております。動作も軽くたいへん使いやすいものです。ありがとうございます。
今回も、手持ちの部品で作りました。それも、抵抗一本、ラグ板一枚も買わないという具合いに徹底しました。したがって、回路的には必ずしも最適でない値のものを使っている場合もあります。
シャーシも当然自作です。天板は300×122×1.5 の真鍮の板を加工しました。10年以上も前に某関東電鉄系高級ホームセンターで購入したものですが、こうした半端なサイズの真鍮の板が良くあったと思います。六十ハップに一昼夜浸け置いてつや消しの燻し仕上げにしてあります。真鍮の場合は、銅のように劇的には変化しません。
シャーシの図面を下記に置いておきます。
電源トランスが特殊なためそのままでは使えないと思いますが、使える部分があれば、自由にお使い下さい。図面の上のものは、建築で言う天井伏図と考えてもらえば良く、シャーシ下(内)側から見た図になります。パーツ配置などは、これを実寸でコピーしたものを何枚も用意して実際に並べて見ると楽しめます。
はかまにあたる部分は、ローズウッドで作りました。はじめに栗の柾板で作ったのですが、どうも真鍮の天板や黒く塗装したカバー付きのトランスには合いません。なんだか弁当の折箱のようになります。ただこうした白い木もバンド型のトランスを使い鉄のシャーシで、ST管の42でも並べたらレトロっぽい良い感じの姿になると思います。
電源トランスは、最近移転した大阪日本橋の某ジャンク屋で、これも10年以上前に購入したものです。 銘板に書かれた仕様を写しておきます。
出力 | 64VA | 型名 | Yc-63 |
---|---|---|---|
一次電圧 | 95-100-105 X 2 V | ||
二次電圧 | 10-0-290 | 6.3 V | |
二次電流 | 0.165 | 2.3 A | |
二次耐電圧 | AC 1.5 / 1.5 / 1.5 KV | ||
製造番号 | 46 | 製造 | 35年6月 |
画像のように、外観は塗装が剥がれてボロボロの状態でした。慎重に錆を落として、塗装の剥がれた凹みはパテで埋めます。これを研いで平滑にする作業を二三回行いつや消しの黒のラッカースプレーで塗装し直しました。
実際のトランスの二次側の端子は、
10-5-0-5-270-290 V
となっておりました。普通に使うと二次電圧が少し高すぎるので、
一次側 0-105 V
二次側 5-270 V
と接続しています。
最終的には、20mAほどのブリーダー電流を流しているので定格いっぱいの使いかたですが、18時間ほど電源を入れっ放しにしておきましたが、少し熱を持っているくらいで大丈夫そうです。製造は昭和35年(1960年)6月となっていますから、今から50年近く前のものになります。真空管やこうしたジャンクな部品を弄んでいると、60年代の日本のこうした基礎的な工業製品は、耐久性やその作りの良さなど、たいへん立派であったと思います。ちなみに、1960年6月というと国会南門で樺美智子さんがなくなられた時です。悲しいことに今の若い人たちは、安保闘争のことも樺さんの名前もご存じないでしょうが、私の学生時代はまだ
ドライバーもロクタル管を使いたかったのですが、ソケットの手持ちがありません。ネット上でもロクタル管のソケットは安価に販売されていますが、新しい部品は一切買わないという方針を貫く事にします。かと言って一般的なMT管では面白くありません。手持ちにリムロック管のソケットと EF40が4本あったので、それを使う事にしました。 EF40は、EF86/6267の原型となった真空管で、まったく同等に使用できるとアナウンスされています。
結果的に米欧のロック機構のついた真空管を並べる事になり、冗談のようで面白いかと思いました。それにロクタル管のベースとリムロック管のソケットのロック機構の部分がともに金属製で、チューブ上部の銀色のゲッターとも合間って良い雰囲気です。
最終的な回路での測定結果を示します。一応の完成後、NFBなし、出力管カソード帰還(6dB)のみ、9.4dB、16dB、20dBと、5段階のNFBをかけて測定してみました。
20dBのNFBをかけた状態では、1W出力時の1kHzの歪み率は、0.51%まで下がりますが、超低域にピークが生じ、8オームの負荷抵抗に0.1μFの容量をパラに抱かせただけで発振してしまいました。9.4dBのNFBでは、1μFの純容量負荷で10kHzの方形波を入れても発振しませんでした。低域のピークも何とか治まっているので、安定を考えて最終的に確定しました。歪み率、周波数特性ともお見せするのも恥ずかしいようなデータですが、私の実力ですから仕方ありません。
それぞれのNFB量の測定データをまとめたものを、参考までにこちらに置いておきます。
OpenOffice.org の表計算で作ったファイルです。OpenOffice.orgは、公開で開発され誰でも自由に利用できるオフィス・ソフトです。 ご覧になる場合は、ダウンロードしてインストールして下さい。
周波数 Hz | 10 | 20 | 40 | 100 | 200 | 400 | 1K | 4K | 8K | 10K | 20K | 40K | 100K | 200K | 300K |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
利得 dB | 0.92 | 1.04 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 0.98 | 0.96 | 0.88 | 0.66 | 0.20 | 0.14 | 0.07 |
出力 W | 0.01 | 0.02 | 0.04 | 0.1 | 0.2 | 0.4 | 1.0 | 2.0 | 3.0 | 4.0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
100Hz | 0.08 | 0.10 | 0.16 | 0.20 | 0.29 | 0.46 | 1.02 | 2.10 | 3.60 | 6.5 |
1kHz | 0.03 | 0.04 | 0.06 | 0.13 | 0.20 | 0.40 | 0.90 | 1.70 | 3.30 | 6.2 |
10KHz | 0.15 | 0.21 | 0.30 | 0.48 | 0.68 | 0.92 | 1.60 | 2.80 | 4.30 | 8.8 |
方形波応答のオシロ画面の画像です。
100Hz + 8オーム抵抗負荷
1KHz + 8オーム抵抗負荷
10KHz + 8オーム抵抗負荷
10KHz + 0.22μF容量負荷
2008年3月23日