2005年6月26日、工房日誌
に掲載
桐を使った仕事をしました。写真は、蕎麦を切る時に使う
蕎麦打ち職人が、気合いを入れた時のいわば「勝負駒板」として、それなりに意匠としても面白いものをと言う依頼でつくったのが、画像のものです。抽斗の前板と側板をつなぐ
私は、板の組手のかきとり部分の仕上げは、必ず鑿で行うようにしています。詳しくは別の機会にしますが、鑿で仕上げて、叩くまたは軽くハタガネで締めて組んだものは、その時はすいている様に見えても、時間が経つと吸い付くようになります。逆に機械で仕上げて、恐ろしげなクランプで無理からくっつけて組んだものは時間が経つと離れてきます。私の友人の宮大工のK君は、すき方が汚い
と表現しています。
恥を晒します。桐の場合は油断して、いつものようないい加減な研ぎで削ると、上の写真のように削り面に穴を穿ったような状態になります。要するに刃物の切れが悪いために、木の繊維を切断するより前に材がもげてしまうのです。
少し気合いを入れて、鑿を研ぎ、慎重に削ると写真程度には仕上がります。まだ少し掘れたような部分が残っていますが、組手の見えない部分ですので、この程度で良しとします。多少言い訳をすると、使った桐が正直あまり良い材とはいえず、特にもろく粘りのないものでした。
細工に使った鑿のうち二本のものを写真に示します。上は、三分(9mm)の鑿、下は六分(18mm)の鑿でいずれも仕上げ用の突鑿です。研ぎ角と照明の当たり方が違うので、違った色に見えますが同じような鑿です。それぞれの刃先を拡大して見てみます。上の三分の鑿は、それなりに気合いを入れて研ぎ上げています。
刃毀れもなく刃先はキレイに直線上に研ぎ上がっています。仕上げ研ぎだけて5〜10分ほどかけると、この程度には仕上がります。これくらいだと、丁寧にすると桐でも先の写真のように、大きな穴を空けることなく削れます。
こちらは、幅・六分の鑿です。さらに拡大・55KB(1040×600px)してご覧頂くと良く分かりますが、中央部分に刃毀れがあります。それに肝心な耳と呼ばれる刃の両端がダレた状態になっています。恥ずかしい話ですが、通常の仕事の最中の3分研ぎ(ウルトラマン研ぎとも言う。もちろん私の造語です)ですと、これくらいで済ませてしまうこともあります。
今回は、この駒板を30数枚作ったのですが、その間に5回ほど、それぞれの鑿の仕上げ研ぎを入れました。他の材では、誤魔化せても桐ではてきめんにボロがでます。まあ情けない話ですが、その事を久しぶりに実感いたしました。
2005年6月26日