IBMの音声ブラウザ・ ホームページリーダーV3.01 の体験版をダウンロードして使ってみました。一応ウエブ標準にしたがって作っているつもりの、自分のページのアクセスしやすさを、実際の音声ブラウザでチェックしたかったからです。残念ながら、ウィンドウズで、インターネット・エクスプローラ 5.0以上という環境でないと動作しません。しかし、現状のパソコンのオペレイティング・システムやブラウザのシェアを考えれば仕方ありません。むしろ、営業的には絶対にペイしないような、こうしたソフトウエアを作り続ける企業としての姿勢というのはとても立派だと思います。
IBMというと、私たちの世代では人間を支配するコンピュータという不気味な機械を作る、巨大な独占企業で、悪の代名詞のようなイメージがありました。しかし、現在ではソフトウエアとかソリューション事業といった分野に力を入れ、こうしたきめの細かい真面目な企業活動を行っているようです。自社内にアクセシビリティ・センターという組織をもうけ、 バリアフリーの扉 というサイトを作って、インターネットのアクセスしやすさに対する啓蒙を行っています。競合する企業や文化をつぶし、自分達だけが独占的、排他的に儲けることしか考えていない某巨大ヤクザ企業とは大違いです。
ちなみに、現在たくさんあるホームページ製作ソフト(オーサリングソフト)の中でも、このIBM社のホームページ・ビルダーというソフトは、ちゃんと使えば、アクセスしやすい、ウエブ標準に準拠したタグをつけるようです。詳しくは、様々なソフトを実際に使って検証した下記サイトがとても参考になります。ソフト購入を検討されている方はチェックしてみてください。
視覚に依存した表現が、たくさんあるとあらためて反省させられました。とりあえず修正したのは、更新記録のページです。ここの更新日時の表記を、これまでは
2002.05.09 ----
としてきました。タイプするのに楽だし、特に注記しなくても、視覚的にはこれで日時を表わしているというのは明らかだと思いました。ところが、これはホームページリーダーでは、
にせんに、コンマ、ゼロご、コンマ、ゼロきゅう、よっつのハイフン
と読み上げられます。日時を表わすという意味が、マークアップされていない以上当然です。4個のハイフンを挿入したのも、視覚的な表示効果のものであって、それならばスタイルシートを使うべきでした。ウエブにおける日時の表記方法は神崎正英さんの下記のサイトに詳しく紹介されています。
これによっても、日本語のページの場合、日時の表記は横着せずに
2002年5月9日
とするのが、一番確実なようです。
画像の代替えテキストの内容についても、考えさせられます。これはテキスト・ブラウザLynxを使っていても感じたことですが、いっそ
alt=" "
とスペースを入れて、何も表示させない方がましな場合も多いように思いました。ただし、スペースを入れて、代替えテキストを表示させないのと、alt
属性そのものを付けないのとは、全く意味が違います。
ホームページリーダーを使って、他のいろいろなサイトも訪ねてみましたが、いまだに画像に代替えテキストを付けていないページがたくさんあるのに驚きました。ホームページリーダーでは、通常の画像で代替えテキスト(alt
属性)が付けられていない場合は、何も読み上げません。ただし、サムネイル画像や、バナーのように、そこにリンクが張られている場合には、その画像のurl
がそのまま読み上げられます。つまり
./table-photo/nara-desk.jpg
といった、訪問者にとっては何の意味もないアルファベットが読み上げられるわけです。テキスト・ブラウザLynxの場合も同じです。不愉快きわまりないことです。当然、そこにどんなリンクが張られているかも分かりません。とくに、ページのナビゲーション表示に、バナーなど画像を使っている場合は注意が必要です。
ホームページリーダーでは、h1
、h2
といった見出しは、小さなベル音を鳴らして教えてくれます。また、「見出し読みモード」という便利な機能があって、そのページの見出しだけを順に読み上げてくれます。私たちも、あるサイトを訪れたとき、まずザッとそのページを眺めてみて、大まかな内容を把握します。何もなしに、いきなり上から順に読み出すことはしないでしょう。「見出し読みモード」は、いわば、音声によるこうした斜め読み機能と言えるのかもしれません。そうした意味で、もう少し分かりやすく、明確な見出しをつける必要があると思いました。この点は、まだ修正できていません。
ところが、見出しタグが全く付けられていないか、あるいは文章の途中で突然h3
タグが現れるようなページがあります。こうしたページでも、視覚表現的な見出しらしきものはあります。インターネット・エクスプローラやネットスケイプといった一部の視覚表現用のブラウザでの、見出しタグの初期設定での表示を嫌って、font
とかcenter
といったHTMLにとって本来、不必要で望ましくないタグを使って、見出しらしきものを視覚的にマークアップしています。こうしたページを「見出しモード」で訪れると、見出しはありません
とされます。視覚障害を持った方が、訪れたとしたら、お前は来なくていいと言われているに等しいでしょう。
推奨ブラウザとか、このページはインターネット・エクスプローラ・N以上で見ろと書いてあるサイトもあります。こうしたサイトは、世界に拡がるウエブ(World Wide Web)ではなく、インターネット・エクスプローラのためのウエブ(Web for Internet Explorar)のサイトと言って良いでしょう。そこにネットスケイプとオペラが加わっても同じことです。それこそが、ヤクザ・地上げ屋まがいのやり方で、ブラウザのシェアを強奪したマイクロソフト社の望んだことでしょう。
忙しく、ちゃんとホームページリーダーを使いこなせているわけではありませんが、音声のためのスタイルシートの対応とか、私自身良く理解していないアクセスキーの事とか、試用期間が来る前に試してみたいと思っています。
2002年5月9日、パソコン日誌に掲載。