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型番 | EAS-16F100 |
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ボイスコイル・インピーダンス | 8Ω |
最低共振周波数(f0) | 90Hz |
最大入力 | 80W |
出力音圧レベル | 95dB |
等価質量 | 6.0g |
Q0 | 0.53 |
質量 | 2.46kg |
松下電器(株)からは、テクニクスブランドで、最近まで様々な種類のスピーカーユニットが販売されていました。フルレンジユニットでは、F10と、F20という型番のものがオーディオ用、F100がPA用とされていました。このF100シリーズには、この16cmのEAS-16F100の他にも、10cmのEAS-10F100、20cmのEAS-20F100があったようです。機種によっては、今でも専門店で在庫されているものを購入出来ます。
一般に、PA用・業務用とされるスピーカーユニットは、オーディオ用のものに比べて、高能率・高耐入力になっています。その分周波数特性などは犠牲にされています。軽い振動板に強力なマグネット、これに固いエッジやダンパーがつき、アナウンスやボーカルと言った人の声の周波数を中心とした帯域を、高能率で遠くまで飛ばすという設計になっているようです。つまり、見方によれば機械として極めてまっとうなものと言う事が出来ると思います。
フレームは黒く塗装された薄い鉄板のプレス。これに比較的大きなフェライトのマグネットが付きます。コーン紙は黒く重く丈夫そうなもので、コラゲーションはありません。エッジはフィクストエッジで、透してみるとそのエッジの部分だけ薄く漉かれています。ボイスコイルのキャップにはアルミのようなものが蒸着されています。
実用本意、はっきり言えば安っぽい作りで、所有欲を満たす物でも、見ているだけで良い音が聴えてきそうなものではありません。このあたり、フォステックスのユニットにも言えることで、かつてのCORALとか、PIONEERのそれと比べると、寂しい気がします。
見た目のペラペラしたイメージに反して、妙な癖のない大人しい素直な音で鳴ります。逆に少し拍子抜けの感すらあります。アーメリンクは、ちゃんと艶かしく、相応の齢を経たご婦人の声として歌ってくれます。さすがに、インパルのマーラーのようなオーケストラを再生すると音が薄くなったような寂しい感じがあります。
逆に、MISIAとか綾戸智絵と言った現代のボーカルを再生するには快適です。こうしたオンマイク録られたソースを、平面バッフルで、低能率で重い音のユニットで再生すると、音像が大きくなり、大きな口を開けて、喰らい付いてきそうな妄想にかられることがあります。このユニットの場合、平面バッフルという条件でも、音像が大きくならずなおかつ音が軽く前に出てきて良い感じです。
故長岡鉄男さんが、何かの雑誌で、スピーカー(選び)の条件を一つだけあげるなら、能率だ。
という主旨のことを書いていました。ネクラな音が好みだった若い頃は、その意味するところが良く分からなかったのですが、色々ユニットで遊んでみて共感出来るようななりました。それに、若い頃からいわゆるPAサウンドが嫌いで、そうした用途の機器やらユニットも毛嫌していました。どうせ、歪みっぽく、キンキンザワザワした頭の痛くなるような不愉快な音を出すものと決めつけていました。でも、いくつかの業務用・PA用のユニットを使ってみて、非常に素直で、音離れが良い
と表現されるような軽く快適な音だと思いました。ようするに使っている連中が下手くそで、イモだった、そうしたコンサートやイベントしか覗いてなかっただけなのでしょう。業務用・通信用の国産真空管が宝の山であるように、この手のユニットにも、もっと面白いものがたくさんあるように思います。