椅子の座を木で作った場合、そのまま平面ですと滑ったりして収まりが悪いので、少し彫り込みます。この作業をザグリと言います。座刳り
から来ているのだと思います。
昔は、すべて手作業だったようですが、今は大手の木工所では、ほとんどが機械加工で出来るようです。我々の場合は、電動のハンドルーターで荒堀をしてから、後は手作業になります。最終的にはサンダーで仕上げる事になるのですが、その前に写真のように豆鉋で削って整えます。いきなりサンダーで削っていくと、どうしても冬目と言われる木目の固い部分と、夏目と言われる柔らかい部分で微妙な凹凸だ生じて、美しくないのです。あらかた鉋で仕上げておいて、サンダーで軽く木地を整えるという感じです。場合によっては、鉋の削り痕をわざと残す場合もあります。形状や材によっては、座ったときに適度な摩擦というか抵抗があって良いものです。
写真は、今やっている仕事で、ウォールナットという材の椅子です。比較的柔らかい扱いやすい材で、一脚か二脚程度でしたら、このザグリという作業は、それなりに楽しいものです。座の刳り方の形状によって様々な形の
これらの鉋は、台の下端とくに刃口に部分の痛みが激しいため、あらかじめ刃口の部分を削って埋め直しておきます。写真は白樫の台に赤樫を埋めたものです。下に並んでいる鉋を見て頂けば分かるように、木端返しと呼ばれる部分に沿って斜めに埋め木をして、刃口には木口が出るようにしています。木口は固いので消耗が少なくてすみます。それでも痛んでしまった場合は、埋め木を叩いて出し、削り直して修正します。そのため、台と埋め木は作業中にずれない程度に軽く接着してあります。
2004年8月1日、工房日誌に掲載。