このユニットは、エッジ不良・ジャンク扱いと言う物をネット・オークションで手にいれました。ペアで2,600円でした。
型番 | EAS-25PX70 |
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ボイスコイル・インピーダンス | 8Ω |
許容入力 | 50W |
このユニットの詳細は不明です。大きく立派なダイカスト製のフレームにドーム型のツイータがつきます。古いタイプの同軸ユニットでは、フレームの前面に桟を渡すような形でツイータを取りつけた物が多いようです。まあ取って付けたという感がなきにしもあらずですが、このユニットは、ウーファのボイスコイルボビンを貫通する形でツイータが取りつけられています。フレームを通して磁力が強烈にもれていますから、マグネットはフェライトの外磁型でしょう。その他にもなんとなくアカ抜けたフレームの形状などから、そう古い年代のユニットでもなさそうです。
例によって、ツイータのローカット用のコンデンサを交換するためと、エッジの張り替えの邪魔になるためにツイータをはずしました。この種の貫通型のものは、フレームの裏側からボルトで固定されているのが普通です。そのためフレーム後ろのアルミの板で出来た銘板をはずさなくてはなりません。ところがこのユニットの場合、フレームに落し込むように隙間なく嵌め込まれているためはずせません。仕方ないので、銘板に穴を空けて、そこからこじるようにして、ようやくはずすことが出来ました。この瞬間、このユニットの商品価値はなくなりました。修理とか補修とかを考えていないのかと文句をつけたくなりますが、メーカーにしてみれば、20年も30年も経って一アマチュア風情が分解するなど想定外の事でしょう。
やはりダイカストで出来たツイータにはボディいっぱいの大きなフェライトのマグネットがつきます。ローカット用の3.3MFの電解コンデンサーがボイスコイルに直列に入っています。写真の赤く見えるものは、コイルでボイスコイルに並列に入れられています。この手の古い同軸型ユニットには、ツイータにローカット用のコンデンサーと減衰用の抵抗が直列に繋がれているだけの場合が多いようです。シンプルで、位相からみの問題もすくなそうですが、計算してみると相当低い帯域までカットされずに減衰していきます。まして、ツイータ自体が純抵抗ではなく、リアクタンスを持ったコイルです。共振周波数帯域ではインピーダンスも高くなるでしょうし、使われる電解コンデンサーの容量増加や絶縁不良の問題もあります。古い同軸ユニットのツイータの断線が多いのも、こうした問題もあるのではないでしょうか。
私は、他にも松下製の同軸ユニットを他に二つ持っていますが、いずれも空芯のコイルを並列に加えた構成です。カットオフはシャープになり、当然耐入力の面でも有利ですが、位相からみの問題がより複雑になります。なによりコストにきいてきそうですが、この辺りはメーカーとしてのポリシーのようなものでしょう。いずれにしろ、位相も含めた精密な測定環境をもたないアマチュアでは、この手のネットワークの設計は無理です。
このユニットは、ネットオークションで入手しました。説明では、エッジ要張り替えとありました。念のため、ウーファ・ツイータとも音は出るのかと質問したところ、簡単に音は出ます
との答え。到着したものを見ると、片方のユニットのツイータのリード線が断線してます。まあ、ネットオークションでジャンクものに手を出す場合、これくらいでめげてはやっていけません。さいわいボイスコイル自体は断線してませんでした。
ゴム製のエッジは、ベトベトに硬化・劣化しており所々亀裂が入り破れています。これは、洗車用のセーム皮(ただし、羊皮)で張り替えました。ウレタンの場合は、硬化するとカサカサになり、指で軽くしごくだけでとれます。このユニットのようにゴムの場合、べと付いて、特にコーン紙の裏側など剥がすのに苦労しました。あまり力任せにやるとダンパーを変形させてしまい、ボイスコイルが摺れてしまうおそれがあります。フレームの内周に合わせて、円形に木を刳り貫き、そこに上からコーン紙を伏せて置いて、ダンパーに負担のかからないようにしました。
フレームもツイータの銀色のメッキ部分も汚れてくすんだような状態でした。これも、金属研磨剤・ピカールで力任せに磨いたら、見違えるほど綺麗になりました。60年代〜70年代の日本の工業製品は優秀で、メッキや塗装も丈夫です。ガスケットのゴムもはずした時にアルコールでゴシゴシこすったら、相応の光沢が戻りりました。トップの写真を拡大してご覧下さい。セーム皮の白っぽい色がアクセントになり、高級感のあるよい感じに蘇りました。
エッジの張り替えで、当然音は変るでしょうから、オリジナルの音を云々は出来ません。そもそもスピーカーユニットにとって、エッジはどういう役割をするのでしょう。素人なりにあげると、
1は、古くからエッジレスのユニットがあるくらいですから、主たる用途とは言えないのかもしれません。ただ、現実に張り替えのため、エッジをはずしてダンパーだけで支えられているフラフラの状態を見ると、現実に多くのユニットでは、ダンパーとともにコーン紙の保持の役を割り当てられている気がします。
2は、布製のエッジもあって、それらの多くは薄く向うが透けて見えます。当然音も抜けるでしょう。ですから、不思議なのは、アマチュア向けのスピーカーエンクロージャ制作の本などで、隙間なく云々と決って書いてあることです。強度とかビリつき防止という意味なら理解できるのですが、中には空気を漏らさぬように隙間にはパテを埋めてとあると理解に苦しみます。密閉箱の場合は、いくらスティフネスの調整と厳密にやってもエッジから盛大に空気は漏れるでしょうし、バスレフとかバックロードホーンのように内部の共振を利用する場合、当然エッジからも音は漏れます。これまで、いくつか箱型のエンクロージャを作ってきましたが、そのたびにこうした率直な疑問を持ち続けてきました。あるいは、こうした布のような薄いエッジのユニットは、小型密閉とかバスレフには不向きという事かもしれません。それでも、どう考えても箱の材よりは薄くて軽い肝心の振動板・コーン紙自体を振わせて変調する事になります。
3、4はユニットとしての音に直接関わってきます。良く振動板のピストン・モーションとか言われ、分割振動は悪のように語られます。しかし、実際のユニットはその分割振動を積極的に利用し、それらしい音を再生しているのでしょう。そのためにコラゲーションの入れ方や数などがメーカーのノウハウに属する重要な要素になっているのだと思います。そうすると、エッジの材質やテンションが変れば、分割振動や音もそれなりに変るはずです。