型番 | FLAT-10 2 |
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ボイスコイル・インピーダンス | 8Ω |
最低共振周波数(f0) | 30Hz |
再生周波数帯域 | 30〜20,000Hz |
プログラム入力 | 55W |
出力音圧レベル | 96dB |
振動系事項質量 M0 | 17.5g |
Q0 | 0.5 |
有効振動半径 a | 105mm |
磁束密度 | 12,000G |
マグネット重量 | 75g |
重量 | 2kg |
コーラル音響という会社は、たくさんの種類のスピーカーユニットを供給してくれた40代以上の自作派には懐かしい存在です。物品税と言う関係もあったようですが、私の少し前の世代の人達は、スピーカーと言えば自分で好きなユニットを買ってきて、箱を作って入れるのが当たり前だったようです。
ただ、私自身はコーラルのユニットにあまり良い印象を持っていませんでした。それは、学生時代(もう1/4世紀前の事になります。)友人の下宿で聴いた音の印象が芳しくなかったからです。合板のバックロードホーン型の箱に入ったコーラルのユニットの音は、きつくウルサイというイメージしか残っていません。ユニットのコーン紙の真ん中から異様な突起状の物が飛び出していたのを覚えていますから、たぶんBETAというシリーズのユニットだったのでしょう。
このFLATシリーズは、コーラルの数多い製品のラインアップの中でも、もっとも基本的なフルレンジの製品だったようです。口径・12cmから25cmまで、4機種があります。FLAT-10はその最上位機種で口径・25cmのものです。フレームは厚めの鉄板のプレス、それに口径の割に大きなフェライトのマグネットが付きます。白いコーン紙にはエッジ近くに4本のコラゲーションがあり、ボイスコイルには大きめのサブコーンが接着され、キャップにはアルミの様な金属が蒸着されています。エッジは、布に樹脂状のものがコーティングされています。良く分かりませんが、ウレタンエッジのように、数年でヘタルものでもなさそうです。私のコーラルのイメージ通り、いかにもドンシャリした音のしそうな外観です。
特性上からは、非常に高能率であることが分かります。また、極めてフラットな周波数特性になっており、特に高域、低域とも目だったピークやディップもなさそうです。しかし、この辺りは、メーカー発表のグラフでは実際の使い勝手は良く分かりません。
非常に高能率なユニットで、他のユニットよりボリュームを絞って聴きました。音は、前に良く出てくる明るい音です。以前の印象と違って、おかしな癖もない素直な音です。かえって拍子抜けしたくらいです。
マニアの方は、他の人に自分の自慢のシステムの音を聴かせる場合、必要以上に大音量にする事が多いようです。学生時代の体験も、狭い六畳くらいの和室で、バックロードホーンの箱に入れた物を大音量で再生されたら、やはりまともな音はしていなかっただろうと思います。まして、当時のことですからアナログ再生で、ハウリングの問題もあったでしょう。今、当時のユニットを、遥かにフラットでまともな周波数特性を持つ現在のデジタルソースを、ちゃんとした箱に入れて聴くと、きっと違った印象になると思います。
FLAT-10の音はどこと言って不満のないものです。アーメリンクの声もちゃんと艶かしく再生してくれます。インパルのマーラーも、口径なりのスケール感が加わった気がして、楽しく聴けます。他にユニットがなければ、これを常用にしていたでしょう。ただ、クラシックの声楽曲を深夜小音量で再生していると、なにか余分な音が付きまとっている気がして、静かな気分になれない事があります。
私たちの使う麗しき日本語には、例外を除いて舌や口蓋を振わせる汚い発音はありません。ドイツ語のリートでは、当然そうした発声がたくさん出てきます。ソースや装置によっては、[ ß ]とか [ w ]とか[ th ]と言った発音が気になり出すと、たまらなくイヤになる事があります。このユニットでも、そうした点が気に触ることがあります。試しに綾戸智絵のディスクを再生してみると、当たり前ですが、全く気になりません。ボーカルが前に飛び出てきて快適です。多少、音像がでかくなりますが、それはソースのせいでしょう。ジャズにしろ、J-POP にしろ、最近のオンマイクの録音のボーカルを聴くと、こうした大きなバッフルでは、皆そうなります。