英国製のユニット。十年程前に新品で購入し、使わずに置いてありました。発売当時、雑誌などでわりと評価の高かったものです。
ボイスコイル・インピーダンス | 8Ω |
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最低共振周波数 | 50Hz |
再生周波数帯域 | 45〜15,000Hz |
許容入力(RMS) | 30W |
出力音圧レベル | 91dB/W(1m) |
総磁束 | 0.56mWb |
ボイスコイル径 | 25mm |
外形寸法 | 203×93mm |
バッフル開口 | φ 178mm |
重量 | 1.8kg |
ダイカストのフレームに大きなマグネットを持った立派な作りのユニットです。ヨーロッパのメーカーでも、ドイツの Telefunken とかオランダの Philips といった大陸の会社のユニットは、鉄板プレスのフレームに小さなマグネットといった質実な作り(別な言い方をすれば安っぽい)ものが多い中で、イギリス製のユニットは、Wharfedale にしろ、goodmans にしろ立派な物が多いようです。
英国製のオーディオ製品というと、T社のスピーカーとかL社のアンプ、S社のトーンアームなど、人を馬鹿にしているとしか思えない価格設定のものが多く、こんな物はアラブの石油成金か、台湾や日本のマニアくらいしか買わないだろうと思ってました。代理店によるのかもしれませんが、このRichard Allanのユニットは、立派な作りの割に、当時の定価で一本 12,500円 と非常に合理的でした。実売価格で、1万円を割っていたように記憶しています。
コラゲーションのない黒いコーン紙に大きなサブコーンが付きます。エッジは、折り返した布にコーティング剤を塗った固そうな物。これを、金色に塗装されたフレームに赤いフェルトのガスケットで固定しています。なんとも不思議な色彩感覚です。買った当初、このユニットは絶対にバッフルに外付出来ないなと思いました。それか、固定式のサランネットで隠すしかないでしょう。買ったまま使わずにいたのも、バッフルへの取りつけ方法で上手い考えが浮かばなかったという事もありました。写真のように、サブバッフルに内側から取りつければ、金ピカのフレームも、赤いガスケットも隠れます。黒いコーン紙だけが見えて、かえって渋い外観になります。
周波数特性とか、インピーダンス特性、あるいはf0とかm0といった細かい仕様は不明です。右の表はバルコムと言う代理店のカタログからとりました。
以下追加・2003年7月13日
このユニットを使った製作記事がありました。このユニットを買った時、参考にと求めたものです。(「トールボーイシステムの製作」・『別冊 ラジオの製作 HiFi スピーカへの招待』・1992年8月31日発行)その中で、このユニットを使ったシステムの周波数音圧特性の実測データ(71kB .pngファイル)があります。これを見ると、10KHzあたりにサブコーンによると思われる猛烈なピークがあります。5KHzあたりのディップと10dB程の開きがあり、その後高域にかけては急速に音圧が下がっています。すばらしい特性です。後述する視聴の印象も納得が出来ました。同じ頃、『MJ 無線と実験』に載った製作記事でも同じような測定データがあったと記憶しています。それでも、いずれの記事も、音は良いと誉めてあります。海外製のオーディオ製品は、特性が悪くても音が良く、愛すべき国産の製品は特性は良いが音が悪いとくさすのが、一人前の評論家・マニアたるべき資格のようです。
このユニットでは、最初に武光徹のギター曲集を聴きました(『武光徹 ギター作品集成』 )。さすがに、毎度毎度シューベルトやマーラーばかり聴いてられません。あ、良い音だと言うのが最初の印象です。コーラルのFLAT-10ほど明るい音ではないが、パイオニアのPE-16Mほど渋い音でもない。軽い、乾いた細目の音が気持良くバッフルから離れてくる。音像は小さめ。レンジは狭い。低い方は、バッフルの影響が大きいので何とも言えないが、ボアついた嫌な音は出さない。高い音は、ある帯域からバサッと切り捨てたような感じ。古い歌謡曲の復刻CDをかけるとこんな音になります。インパルのマーラーはとても聴きやすい。
アーメリンクをかける。風邪をひいてしわがれたような声で歌う。正直言って、聴くに耐えない。割にオンマイクで録音された、ホグウッド・エンシェント室内管弦楽団の l'oiseau lyre レーベルのディスクもガシャガシャした音になります。
このユニットも新品で購入した物でしたので、エイジング不足かと思い一週間程差し障りのないディスクをかけて聞いていました。その後、アーメリンクなどを聴きましたが、少しこなれた感じはしましたが、基本的には同じでした。( 追加・5月19日 )
まあ、雑誌の記事などあてにならない、少なくとも自分の嗜好とは異なる場合もあると再認識しました。それでも、狭いレンジの中で、乾いた軽い、それでいて渋目のこのユニットの音を好む人も多いでしょう。オーケストラや器楽曲を静かに流す分には快適だと思います。アナログ・ディスクや古い録音のディスクを再生するにも良いでしょう。加えて、ブリティッシュ・サウンド
なる能書きが付け加われば満足度も高いでしょう。好みの問題でしょうが、私としては同じダブルコーンのフルレンジユニットなら、コーラルのFLAT-10ではなく、こちらを敢えて選択する理由は何一つありません。